通信機器メーカー大手のシスコシステムズが大阪の新オフィスで、独自の技術による効率的なLED照明の利用法を開始した。通常の電力線を使わずに、社内のパソコンや電話をつないでいるイーサネットに接続して電力を供給する。この仕組みにより社員が電話からLED照明を制御できる。
シスコシステムズは6月4日に開設した大阪オフィス(1フロア)の照明のうち半分の54台にLED照明を採用した。残りの半分は通常の蛍光灯を使って、LED照明と比べた電力使用量の違いを検証する。
この取り組みで注目すべきは、LED照明を電力線ではなくて通信用のイーサネットにつないでいる点だ。シスコが独自に開発した「UPOE(Universal Power On Ethernet)」と呼ぶ技術を利用する。UPOEを使うとパソコンやIP電話に加えてLED照明に対しても、ネットワーク制御装置からイーサネット経由で電力を供給することができる(図1)。
大阪オフィスに90人いる社員の机の上には、1人に1台のIP電話が置かれていて、画面上に54台のLED照明の状態が表示されている(図2)。54台のLED照明が6台ずつ9つのゾーンに分けられており、ゾーンごとに100%、50%、0%の3段階で点灯状態を設定することができる。
さらに社員が在席中にはIP電話からネットワークにログインしているため、その情報をもとに席の近くにあるLED照明を自動的にオン/オフする機能も実装した(図3)。
こうした利用方法をテストケースで検証したところ、一般にLED照明は通常の蛍光灯と比べて約5割の電力使用量を削減できると言われているが、「それを上回る6割〜7割の削減効果があることを実証できた」(シスコシステムズの今井俊宏テクノロジー&リサーチセンターシニアマネージャー)という。
大阪オフィスでは大型のモニターを使ったデジタルサイネージの仕組みも導入しており、時間帯別の電力使用量を表示するようにした(図4)。LED照明の電力使用量は30秒ごとに測定する。今後はパソコンやサーバーなどを含めてネットワーク全体の電力使用量を把握して制御できるように、提携先のジューレックス社のエネルギー管理システムを組み合わせて使う予定だ。
LED照明の電力をイーサネットで供給する別のメリットもある。一般に電気製品で使われている交流ではなく、電流の向きが変わらない直流を使うため、フリッカー(ちらつき)が起こらない。目の疲れを緩和する効果が期待できる。
シスコは大阪オフィスの利用効果をもとに、東京の本社オフィスにも同様のシステムを導入する計画である。さらに自社の通信機器と組み合わせたシステムの外販も1年以内に開始する。
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