インテルが出資する電力管理システム、国内の販売を本格展開へエネルギー管理

欧米で約150社の大手企業が導入している電力管理システムが日本でも市場拡大に乗り出す。米国インテルが出資するジューレックス社のシステムで、サーバーやプリンタなどデジタル機器の消費電力をリアルタイムに管理・制御できる点が特徴だ。

» 2012年05月24日 19時19分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 ジューレックスの電力管理システム「JouleX Energy Manager」(略称JEM)は、企業内の情報通信ネットワークを使って消費電力を管理・制御するソフトウェアである。サーバーやパソコン、通信機器やプリンタといった、デジタル機器の使用台数が多い大手企業やデータセンターの節電対策として、ヨーロッパを中心に導入事例が増えている。このほど日本法人がITインフラ構築・運用サービスの京西テクノス(本社:東京都多摩市)と提携して、国内の販売活動を本格的に開始した。

 通常のBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)が照明や空調機器などを配電ネットワークを使って管理するのに対して、JEMは情報通信ネットワークを使ってデジタル機器の消費電力をリアルタイムに管理する。BEMSと連携して企業内の消費電力を一元的に管理することも可能である。

 JEMはWindowsを搭載したサーバーにソフトウェアをインストールして、オフィスやデータセンターで使われている各種の機器から消費電力のデータを収集する仕組みだ(図1)。データを収集するためのプロトコルは、機器の種類に合わせて標準的なものを利用する。例えばUNIXサーバーやLinuxサーバーは「IPMI」、ルーターなどの通信機器やプリンタは「SNMP」が対応する。機器側にはソフトウェアをインストールする必要はない。

ALT 図1 「JouleX Energy Manager」のシステム構成と管理対象機器。機器の種類ごとに標準的なプロトコルを使ってソフトウェアで消費電力を管理・制御する。出典:ジューレックス

 機器の中に電力センサーが内蔵されている最新のサーバーやパソコンの場合は、消費電力を100%の精度で測定できるため、さまざまな電力管理が可能になる(図2)。

 特に注目すべき機能は、サーバーやパソコンのCPU稼働率のデータをもとに、動作状態を自動的に変更できる点である。「パワーキャッピング」と呼ぶ機能で、CPUの稼働率が低い状態になると、CPUの動作周波数を低くして消費電力を下げることなどが可能だ。「実際にドイツや日本のデータセンターで使われており、消費電力を18%も削減できている」(ジューレックスの林界宏社長)。

ALT 図2 管理対象機器が内蔵する機能によって消費電力の測定精度が変わる。電力センサーを内蔵している最新のサーバーやパソコンの場合は、実測値を使って100%の精度で消費電力を把握。出典:ジューレックス

 管理対象の機器の消費電力は時間別・組織別・地域別などで集計してパソコンのディスプレイに表示する(図3)。消費電力をもとに電気料金を計算する機能もある。ただしグラフやメニューの一部が日本語化されていない点は導入にあたって注意が必要である。

ALT 図3 電力の使用状況を表示した画面例。機器単位の消費電力を時間別・組織別・地域別などで集計。出典:ジューレックス

 JEMはライセンス販売方式をとる。サーバー2台とパソコン100台の電力を管理する標準的な構成の場合で、導入時のライセンス料が約10万円、そのほかに年間の保守料金が20%かかる。「電気料金の削減分によって、通常は3年程度でコストを回収できる」(林社長)。

 JEMを導入した企業の中では自動車メーカーのBMWが最も数多くの機器を接続して使っていて、約25万台の機器をJEMで管理しているという。日本国内では3社が利用中である。

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