世界の地球温暖化防止の象徴になっている京都だが、地理的な条件もあって再生可能エネルギーの導入は遅れている。省エネの取り組みが「けいはんなエコシティ」を中心に先行していて、地域単位のエネルギー管理システムと再生可能エネルギーを組み合わせて温室効果ガスを削減していく。
1997年に採択された「京都議定書」は、地球温暖化防止に向けた世界各国のマニフェストだ。国際会議の場になった京都府は率先して温室効果ガスの削減に取り組む計画を打ち出し、着実に成果を上げてきた(図1)。
国が設定した2020年に25%削減する目標に向けて、2008年に13.5%の削減を達成した。さらに2030年に40%、2050年までに80%の大幅な削減目標を掲げている。ただし関西電力の原子力発電所の再稼働が見込めない状況では、今後の目標達成はかなり難しくなっている。
そこで京都府は新たに「エコ・エネルギー」をキーワードにした戦略を策定中だ。再生可能エネルギーの拡大、ITを活用したエネルギー消費量の削減、LNG(液化天然ガス)による環境負荷の低い火力発電の導入、という3つを柱にした計画になる。
実際のところ京都府の再生可能エネルギーの導入量は少ない(図2)。近畿の6府県に共通する問題だが、面積の狭さや風況・水量・地熱などのエネルギー源が十分に見込めないことが影響している。そうした状況の中で原子力に依存しないエネルギー供給体制を作り、しかも温室効果ガスを大幅に削減するために、3本柱の戦略を推進する。
現状では関西電力が供給する電力と京都府内の最大需要の間に60万kWの大きなギャップがある。これを再生可能エネルギーによる「創エネ」、蓄電池を含む地域単位のエネルギー管理システムによる「省エネ」、さらにLNGを使った火力発電所の建設でカバーする方針だ(図3)。
創エネはメガソーラーやバイオマス発電の増加を見込んでいて、メガソーラーで3万kW(30MW)を想定する。すでにソフトバンクが京都市内で1000kW(1MW)のメガソーラーを稼働させており、まもなく運転を開始する他のメガソーラーを加えると合計で1万kW近い規模まで拡大している。目標に対して3分の1のレベルだ。
LNGに関しては京都府の日本海側に供給基地を作るよう国に提言するとともに、京都府みずから火力発電所の誘致を進めていくことを宣言した。温室効果ガスの排出量を抑えた高効率の発電設備を前提にしており、ガスコンバインドサイクル方式の導入が予想される。
現在のところ京都府で稼働中の火力発電所は関西電力の舞鶴発電所だけで、石炭を使った最新の設備で180万kWの発電能力がある(図4)。原子力による大飯発電所が236万kWで稼働しているが、それに匹敵する発電規模を石炭火力で実現している。
京都府が計画しているLNG火力発電所は15万kW程度の小規模なものだが、脱・原発に向けた取り組みは着実に進みつつある。
残る省エネの取り組みでは「けいはんなエコシティ」の実証プロジェクトがモデルケースになる。国内4か所で2010年から始まったスマートシティプロジェクトのひとつで、けいはんな(京阪奈)の名前からわかるように、京都・大阪・奈良の3府県をまたぐ丘陵に造られた学術研究都市の中で進められている。
太陽光発電やバイオマス、電気自動車や蓄電池などを活用しながら、地域全体のエネルギーを管理・制御できるシステムによって自立分散型のスマートシティを構築する試みである(図5)。2014年度までの5か年計画で、次世代に向けた技術やシステム、ビジネスやサービスの仕組みを進化させていく。
古いものと新しいものが見事に調和している点が古都・京都の大きな魅力である。エネルギーに関しても最新の取り組みが最適な形で浸透していき、世界のモデル都市になることが期待される。
2014年版(26)京都:「古都にも再生可能エネルギーを、スマートな町家を起点に普及を図る」
2013年版(26)京都:「京都議定書の誕生の地、伸び悩む再生可能エネルギーを21倍に」
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