温泉地には豊富な地熱資源が眠っている可能性が高い。地中深くまで穴を掘る本格的な地熱発電に踏み切らずとも、湧き出している温泉水を使った「バイナリー発電」という手法も使える。このたび、日本全国7カ所の温泉地で地熱発電に向けた調査が始まることになった。
今回調査を始めるのは、足寄町地域(北海道足寄郡足寄町)、東伊豆町熱川温泉地域(静岡県賀茂郡東伊豆町)、宇奈月温泉地域(富山県黒部市)、田辺市本宮地域(和歌山県田辺市)、有福温泉町地域(島根県江津市)、豊礼の湯地域(熊本県阿蘇郡小国町)、石松農園(熊本県阿蘇郡小国町)の7カ所。どの場所も近隣に温泉が湧き出している土地だ(図1)。
この調査は経済産業省の平成24年度「地熱資源開発調査事業費助成金交付事業」の助成金を受けて実施する。ただし、この事業のうち「地元の地熱関係法人等が行う事業に限る」という条件で募集した地域と業者に限る。
経済産業省としては、エネルギーの地産地消に加えて、地域活性化につながる事業を実施する事業者を選んだという。さらに、地元の業者であるという条件も付けた。以上の条件を満たした業者の応募を受け付け、審査の結果7カ所が補助対象となった。
経済産業省は地熱発電の可能性を探る調査にかかる費用を全額補助する。事業化の可能性が十分と分かったら、事業者の手で発電設備を建設してもらうということだ。
大分県の別府温泉で温泉水を利用したバイナリー発電施設の建設が始まり、ほかにもいくつかの温泉地がバイナリー発電の導入を検討している。一方で温泉に悪影響を及ぼすなどの理由で、反対する声が多い地域もある。しかし、反対する前に一度調査してみるべきではないだろうか? 調査の結果、悪影響が及ぶと分かれば止めれば良いし、悪影響なしに効率よく発電ができると分かったらどんどん発電設備を導入すべきだろう。
温泉を利用したバイナリー発電は、事業化のめどさえ立っていれば、発電設備の建設はほかの発電方法に比べて安価に済む。工期もそれほど長くない。今回のように経済産業省が可能性を確かめる調査費用をすべて補助するという取り組みは、全国に温泉発電を普及させる起爆剤になるかもしれない。
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