2020年に電力のベストミックスを完成、自民党の公約よりも3年早く法制度・規制

国のエネルギー戦略を立案するためには、将来の電力の構成比をどうするか、を決める必要がある。火力、原子力、水力、そして再生可能エネルギー。4種類ある電力を最適な比率にする「ベストミックス」の実現に向けて、経済産業大臣が7年後の2020年を目標に設定した。

» 2013年03月04日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 政府が推進する経済成長路線の中で、TPP(環太平洋パートナーシップ)と並ぶ最重要課題がエネルギー戦略の再構築である。前・民主党政権が打ち出した原子力ゼロを目指す戦略は消え去り、現・自民党政権は原子力発電所の再稼働を前提にした新しい戦略を検討している。

 戦略立案の中心になる茂木敏充経済産業大臣は「エネルギー最先進国」になる目標を掲げて、生産(発電)、流通(送配電)・消費(小売)の3段階で具体的な政策を推進することを表明している。生産に相当する発電に関しては、原子力の位置づけを含めて、どのような電力の比率で将来の需要に応えていくか、を決める必要がある。

 自民党は政権公約の中で「遅くとも10年以内には将来にわたって持続可能な電源構成のベストミックスを確立する」と宣言していた。さらに茂木大臣は2月28日の経済財政諮問会議において、「エネルギーのベストミックスについては7年後の2020年に完成させたい」と公約に示した期限よりも3年早く実現させる意向を明らかにした。

 そのためには電力の構成比を早期に決めて対策を実施していく必要があり、2013年末までに策定する「エネルギー基本計画」の中で具体的な目標値を設定する見込みだ。カギを握るのは原子力の比率である。大飯発電所に続いて新たに原子力発電所を再稼働できた時が節目で、その段階で将来の見通しをつけることが可能になるだろう。

 現在の流れでは、今秋までに1か所か2か所で原子力発電所を再稼働するのと合わせて、残りの発電所の可能性を見極める。並行して火力用の燃料(天然ガス、石炭、石油)と再生可能エネルギーの将来動向を予測すれば、2020年のベストミックスを設定することができる。

図1 2011年度の発電電力量の構成。出典:資源エネルギー庁

 2011年度の構成比を見ると、年間の発電電力量では火力が78.9%、原子力が10.7%、水力と再生可能エネルギーで10.4%になっている(図1)。2011年度は東日本大震災によって原子力発電所の運転停止期間が長く、従来と比べて比率が大幅に減少した。前年の2010年度は原子力が30.8%、火力が59.3%で、2011年度には約20%に相当する電力が原子力から火力にシフトしたことになる。

 現状から予測すると、2020年度には原子力を2010年度の3分の1程度に抑えるレベルが限界だろう。一方で燃料費が高い石油は数%に減って、その分を再生可能エネルギーがカバーする。2020年のベストミックスは「火力70%、原子力10%、水力10%、再生可能エネルギー10%」といったあたりが現実的と考えられる。

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