電力と熱の両方を供給できる「コージェネ」キーワード解説

国や自治体が補助金制度を設けて「コージェネレーションシステム」の普及に力を入れている。略称「コージェネ」は電力と熱を同時に作り出せる設備で、燃料を2倍の効率で使える点がメリットだ。熱は給湯と冷暖房に利用できる。企業や家庭の自家発電設備として利用価値が高まってきた。

» 2013年04月26日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 一般の企業や家庭で導入しやすい自家発電設備は今のところ2種類に限られる。1つは太陽光発電システム、もう1つはコージェネレーションシステムである。家庭用では「エネファーム」の名称でコージェネが数多く普及している。企業では熱や湯を大量に使う工場、病院、ホテルなどの導入事例が多く、今後はオフィスビルでも増えていくだろう。

 コージェネはガスなどの燃料を使って発電用のタービンを回して電力を作るのと合わせて、燃焼時に発生する廃熱を再利用して冷暖房や給湯も可能にする(図1)。同じ量の燃料で電力と熱を同時に(co、コー)作り出すこと(generation、ジェネレーション)ができるため、燃料の節約に大きな効果がある。一石二鳥のエネルギー供給システムと言える。

図1 コージェネレーションシステムの基本的な仕組み。出典:コージェネレーション・エネルギー高度利用センター

 このように燃料を節約できる点がコージェネの最大のメリットで、ガスを使った通常の火力発電と比べると2倍近いエネルギーを生み出すことができる。標準的なガス火力発電では燃焼エネルギーの半分以上が廃熱や送電で失われてしまい、電気エネルギーとして利用者が使える量は40%程度に減ってしまう。最先端の高効率なガス火力発電設備でも50〜55%程度にとどまる。

 これに対してコージェネは利用者の現場にある設備で発電するために送電ロスがなく、廃熱もエネルギーとして利用できる。電力と熱の両方を合わせると、燃焼エネルギーの75〜80%を無駄なく使える(図2)。最新の製品ではエネルギー効率が90%を超えるものもある。効率が良くなる分はCO2排出量を削減することにつながる。

図2 コージェネレーションによるエネルギー効率。出典:コージェネレーション・エネルギー高度利用センター

 コージェネは用途によってタイプが分かれる。電力を多めに供給するタイプと熱を多めに供給するタイプがある。熱は給湯と暖房に利用するケースが多く、病院やホテルなどに向いている。工場や店舗には電力を多く供給するタイプが使われる。工場で使われる大規模なコージェネになると、1万kWクラスの発電能力を発揮する。

 コージェネが供給する熱を冷房に使う場合には、専用の設備が必要になる。廃熱を冷水に変換するための「吸収式冷凍機」のような追加設備を導入しなければならず、大規模な冷房設備を運用する場合を除いてコストメリットは得にくい。冷房には電力を使うほうが一般的である。

 コージェネのメリットのひとつに、停電の時にも利用できる点がある。たいていのコージェネは運転開始時に少量の電力を必要とするため、小型の非常用発電機を併設するなど何らかの手段を用意しておかなくてはならないが、その対策さえ講じておけば災害時の電力供給源として利用できる。ただしガスの供給に支障がないことが前提だ。

 今後は一般の企業でもBCP(事業継続計画)の観点で、災害時の電力を確保する手段が求められる。電力コストの削減と合わせて、特にビルを保有する企業にとっては有効なエネルギー対策になる。

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