業界規格JEL801がJISへ、まずは安全性を定める法制度・規制

現在の直管形LEDは方式が一本化されていないものの、規格化は徐々に進んでいる。今回JIS規格となったのは、業界団体の規格だったJEL801だ。従来の蛍光灯とは異なる金具を用いる方式である。ただし、海外ではJEL801とは異なる規格が策定中であり、日本の方式が広く受け入れられるかどうかは未知数だ。

» 2013年05月07日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 経済産業省は、2013年4月、直管形LEDに関するJIS規格「JIS C 8159-1」を公開した。日本電球工業会(JELMA、現在の日本照明工業会)が2010年に策定済みの「JEL801:2010」*1)規格がJIS化された形だ。今回の動きはどのような意味を持つのだろうか。

*1) 正式名称は「L形ピン口金GX16t-5付直管LEDランプシステム(一般照明用)」。

 蛍光灯を置き換えつつ普及が進む直管型LEDは、大きく2種類に分かれる。1つは、従来と同じ器具(灯具)に装着可能なタイプ「G13口金対応品」(G13)、もう1つはLED専用の灯具に装着する「JEL801対応品」(JEL801)だ。表面上の違いは灯具に差し込む口金の形状だ。G13は蛍光灯と同じ針状、JEL801はLの字とTの字になっている。

 2つのタイプが並立している理由は、蛍光灯を直管形LEDに置き換える際に何を優先するかが異なるからだ。G13は、従来の灯具をそのまま残し、内部の電源部分を交換・改造することでLED対応するというもの。導入コストをJEL801の半分程度に抑えることができる。これが最大の特徴だ。

 JEL801は、灯具ごと交換してしまう(図1)。なぜだろうか。蛍光灯にはスターター形、ラピッドスタート形、インバータ形などさまざまな方式があり、電源部分の回路・構造が異なる。G13のように電源を交換・改善するには専門知識が必要であり、安全性が十分確保できない可能性があるという理由だ。JEL801はLEDの光に関する要件も設けている。蛍光灯とLEDは本来、全く異なる原理で光を放つため、明かりの性質も異なる。蛍光灯と変わらない光を放つことを保証するのがJEL801である。

図1 JEL801の口金と電源。出典:経済産業省

今回は安全性を規定

 今回のJISでは、LED専用口金であるGX16t-5を前提としている。内容は大きく3点に分かれる。落下防止と感電対策、光生物学的安全性だ。

 蛍光灯はガラスの管でできている。このため点灯時に加熱してもほとんど膨張せず、形も変わらない。直管形LEDは樹脂素材を使う場合があり、熱膨張や変形の可能性がある。そこで、JISでは温度が変化しても、管が落下しないよう寸法の変化範囲を規定した。

 GX16t-5口金のうたい文句は感電の危険性が少ないことだ。管の両側に金属の「棒」が出ているが、給電に使うのは片側だけ。このため、LEDランプを交換する際に口金に接触したとしても感電する可能性が低い。JIS規格では、LEDランプのランプカバーに破損しにくい材料を使うこと、破損した場合でも感電から保護される構造を規定した。さらに、LEDランプ装着時に誤って片方の口金(L字)のみが接続された場合でも感電を防ぐ仕組みを規定した。通電部分と手の触れる部分の間の絶縁抵抗と耐電圧を規定した。

 光生物学的安全性では、紫外線など一部の波長の光が人体に悪影響を与える現象を対象としている。LEDランプが放つ光を測定する手法を明らかにし、安全性を保つことができるという。

関連規格の状況

 直管形LEDに関する国際規格化も進行中だ。IEC(国際電気標準会議)は、IEC 62776(Double-capped LED lamps for general lighting services - Safety specifications)の検討を進めており、現在は、委員会原案(CD)の段階だ。IECの規格は、今回のJISとは異なり、G13口金対応品の規格化という形になっている。具体的にはグロー安定器を使用した器具(スターター形)の安定器を変更することで直管形LEDを点灯可能にするというもの。経済産業省によれば、国内にはスターター形以外の蛍光灯も広く普及しているおり、IECは国情に合わない。今回のJIS規格をIECに提案していくとした。

 直管形LEDのJIS規格化は今後も続く。今回のJIS C 8159-1は安全性を中心に定めているため、2013年度中には光の性質、具体的には光束維持率の測定法をJIS C 8159-2として公開する予定である。その後は表1のようなJIS規格を計画している。

規格番号 予定時期 名称
JIS C 8159-2(仮) 2013年度 一般照明用GX16t-5口金付直管LEDランプ-第2部:性能要求事項
JIS C 8105-1 追補1 2013年度 照明器具-第1部:安全性要求事項通則 追補1
JIS C 8131 2013年度 道路照明器具
JIS C 8112 2014年度 蛍光灯卓上スタンド(勉学・読書用)
JIS C 8115 2014年度 家庭用蛍光灯器具
JIS C 8121-2-3(仮) 2014年度 ランプソケット類-第2-3部:GX16t-5ソケットに関する安全性要求事項

 日本照明工業会は、JIS C 8159-2などの下敷きになり得る指針「高品質照明用LED光源における性能要求指針」をJIS公開後、2013年4月に発表している。ランプ効率や全光束、光源色の区分、演色、寿命、安全性といった性能項目を定めた。例えば、ランプ効率が70lm/W以上であることや、平均演色評価数Raが80以上であること、寿命は4万時間以上であって、寿命の4分の1の時点では光束維持率が91.5%であることなどを決めている。


【訂正】 記事の掲載当初、第4段落で「GEL801」としておりましたが、これは「JEL801」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。

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