消費電力と明るさの関係を読み解こう“数字”で選ぶLED照明(1)

オフィスにおいても住宅においても照明機器はかなりの電力を消費する。節電のためにLED照明を導入する例は多い。しかし製品を選ぶときに、消費電力だけを見て単純に決めていないだろうか? この連載では、カタログからは直接見えない数字を導き出し、本当に優れた製品を選ぶ方法を解説する。

» 2013年02月18日 07時00分 公開
[片山朋子/遠藤照明 照明計画研究所,スマートジャパン]

 今回は明るさと消費電力の関係を考えてみたい。照明機器の明るさを示す単位としては「ルーメン(lm)」が有名だ。この値は「全光束」とも呼び、照明機器あるいはランプが放つ光の量を表す。一般的なオフィスでよく使う40形の直管形蛍光灯なら全光束の値は3600lm程度だ。

 LED照明を導入するときにこの値だけを見て、同じ性能を発揮するものを求めようとすると失敗することが多い。LED照明に入れ替える最大の理由は消費電力量の削減なのだから、消費電力量も考えなければならない。

 消費電力の値もカタログを見れば書いてある。しかし、大切なことは消費電力の値と明るさを示す全光束の値を合わせて考えることだ。この時に役に立つ指標がルーメン/ワット(lm/w:ルーメン・パー・ワット)である。

 ルーメン/ワットは、消費電力1W当たりの光の強さを示す。いかに少ない電力で明るい光を効率良く得られるかを表す指標とも言える。ルーメン/ワットは、光源の全光束(ルーメン)を定格消費電力(ワット)で除算することで求められる。例えば40形の直管形蛍光灯の消費電力を40Wと考えてみよう。全光束の値は先に述べた例を利用して3600lmとする。計算すると、

 3600÷40=90

 となり、40形の直管形蛍光灯は90lm/Wということになる。

図1に主なランプ4種類のルーメン/ワットの値を計算した結果を示す。

図1 一般的なランプ4種類のlm/Wの値。出典:遠藤照明

 水銀灯といえばかなり強い光を放つランプだ。全光束の値を見ても、2万2000lmと、ほかのランプとは比べ物にならないくらい強く光る。しかし、400Wもの電力を消費するため、ルーメン/ワットを計算すると55lm/W、つまり1W当たりの光束は55lmとなる。

 白熱電球は水銀灯よりもさらに効率が悪い。光束が810lmで消費電力が60W。計算すると13.5lm/Wとなり、1W当たりの光束がわずか13.5lmとなってしまう。

 図1を見ると、水銀灯や白熱電球に比べると、Hf32形の直管形蛍光灯は110lm/W、LED電球は76.4lm/Wと効率が高いことが分かる。全光束の値や消費電力の値をそれぞれ単独で比較しても、効率の良し悪しは見えてこない。効率が良い、つまり少ない電力で明るく光る照明を選ぶにはルーメン/ワットを計算して、1W当たりの光束を確認するとよい。

蛍光灯とLED照明では計算方法が異なる

 ここで1つ注意してほしい点がある。ルーメン/ワットの計算方法は、蛍光灯の場合とLED照明の場合で変わるということだ。蛍光灯の場合は、省エネ法が定める「蛍光灯のエネルギー消費効率」として、次の式で求められる。

 蛍光灯器具に装着する蛍光ランプの全光束÷その蛍光灯器具の定格消費電力

 「蛍光灯器具に装着する蛍光ランプの全光束」とは器具に装着したばかりのランプの全光束を指す。

 LED照明の場合は蛍光灯とは異なり、光源部(LEDモジュール、蛍光灯で言えばランプ)を交換できないことが多い。そのため、カタログにある全光束の値は、照明器具が放出する全光束(LED照明器具の定格光束)とするのだ。つまり、LED照明のルーメン/ワットは、LED照明器具が発する全光束をLED照明器具の入力電力(定格消費電力)で除算した値となる。この値は「LED照明器具の固有エネルギー消費効率」とも呼ぶ(日本照明器具工業会 JLAガイド134:2010「LED照明器具に関する表示についてのガイドライン」)。蛍光灯の効率とLEDの効率はそれぞれ全光束の定義が異なるため、同列で比較することができないのだ(図2)。

図2 LED照明器具と蛍光灯照明器具のエネルギー消費効率の定義。全光束の定義が異なるので、これらの計算結果は同列には比較できない。出典:遠藤照明

 では、比較する方法はないのだろうか? 簡単な方法としては、蛍光灯器具のルーメン/ワットをLED照明器具のルーメン/ワットを計算する方法で求めてしまうという方法が挙げられる。蛍光灯のランプ単位ではなく、蛍光灯の照明器具単位で計算してしまうのだ。ほとんどの照明メーカーは照明器具製品の器具効率をWebページで公開しているので、この値を参照すれば計算できる。

 図3は遠藤照明が販売している蛍光灯の器具の仕様をまとめたものだ。ここにあるデータはカタログを見れば簡単に得られる。

図3 遠藤照明が販売している蛍光灯の器具の仕様。出典:遠藤照明

 図3左側のピンク色の枠で囲んだ部分を見てほしい。エネルギー消費効率が記載してある。これは蛍光灯照明器具に装着する蛍光ランプの全光束(lm)÷消費電力(W) の式で求めたものだ。消費電力が79Wであることが分かる。

 次に図3右側のピンク色の枠で囲んだ部分を見てほしい。実際の照明器具が放出する全光束(定格光束)が4198lmであることが分かる。以上で得たデータから、この蛍光灯器具のルーメン/ワットを計算すると以下の通りになる。

 4198lm ÷ 79W = 53.1lm/W

 カタログを見るとエネルギー消費効率は101.3lm/Wとなっているが。LED照明器具の固有エネルギー消費効率と同じ方法で計算すると、かなり違う値になることが分かるだろう。このように器具の仕様によって光源光束から求めた値と定格光束から求めた値が大きく異なることもあるのだ。

 先の例では定格光束が4198lmということがカタログから簡単にわかったので、計算も簡単だった。しかし、カタログによっては器具効率や光源光束しか分からない場合もある。このようなときは光源光束に器具効率を乗算することで定格光束を求められる。図3のデータを見ると、光源光束が9900lmで、器具効率が0.42とある。計算すると以下の通りだ。

 9900lm × 0.42 = 4158lm

 図3にある器具効率の値は端数を四捨五入しているため、カタログにある定格光束と計算した値は多少異なるが、大体の目安にするなら十分だろう。

 次回は価格当たりの明るさを求めて、製品を評価する方法を解説する。

第2回:「コストパフォーマンスを意識しよう」

計算はできたけど、製品選びの基準が分からない……

 以上で説明したルーメン/ワットを求めれば、照明機器のエネルギー消費効率が簡単に分かる。しかし、値を計算しただけでは、製品を選ぶのはちょっと難しいということもあると思う。このようなときは、「一般的にこれくらいの値なら良い製品」という基準があると決めやすくなる。その基準として使えるのが、「グリーン購入法」が推奨する値だ。

グリーン購入法とは、国の機関(国会・各省庁・裁判所等)や独立行政法人等が率先して、環境負荷の低減につながる原材料・部品・商品(環境物品)を購入することを促進する法律だ。公共機関が率先して購入することで、価格が下落し、一般消費者も環境負荷の低減につながる物品を購入しやすくなるということも狙っている。このグリーン購入法が推奨する値を図aに示す。この値をある程度の目安にして商品を選定するのも1つの方法だ。

図a グリーン購入法が定める照明器具のエネルギー消費効率。出典:遠藤照明

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