「20万トン」の未利用材を有効利用、王子が北海道で木質バイオマス発電自然エネルギー

他の用途に利用できない樹木の一部分をボイラーで燃やして電力を得る木質バイオマス発電。排出した二酸化炭素が再び樹木に戻るため、再生可能エネルギーの一種である。製紙大手の王子ホールディングスは国内3カ所に発電所を建設、北海道では年間20万トンの山林未利用材を用い、25MWの出力を得る。

» 2013年08月02日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 製紙業では紙を作る工程で生まれる不要な廃液などを利用して自家発電を進めてきた。これは再生可能エネルギーの利用が脚光を浴びる以前の話だ。

 固定価格買取制度(FIT)が成立し、バイオマスも買取対象になると、紙にならなかった山林未利用材などを用いたバイオマス発電に取り組む企業が増えてきた。

図1 江別市とバイオマス発電所の位置。江別市は札幌市に隣接する。

 王子ホールディングスの子会社、王子グリーンリソースもその1例だ。同社は王子グループが所有する森林資源を有効活用するために2012年に設立された企業。これまで静岡県富士市と宮崎県日南市へのバイオマスボイラーの導入計画を発表、2013年7月には北海道江別市への導入計画を公開した(図1)。

 約85億円を投じて、特殊紙を製造する王子エフテックスの江別工場構内の約2万m2の土地にボイラー設備と貯蔵設備(ヤード)を置く。設計・調達・建設(EPC)はボイラーメーカーが担当する。建物の基礎工事を2014年4月に開始し、2015年7月に売電を開始する予定だ。2015年3月に売電開始を予定する富士市と日南市の発電所に続き、2015年には3カ所で発電が始まる。

 江別市のバイオマス発電所では年間20万トンの山林未利用材を用い、1時間に100トンの蒸気を生成、出力25MWを得る。売電収入は年間約40億円だ。売電先は北海道電力の他、新電力も候補に挙がっているという。

 発電時に生成する蒸気と温水の一部は、王子エフテックスの江別工場に供給し、製造した紙の乾燥工程に役立てる計画だ。一種のコージェネレーションに当たる。

 「バイオマス発電所は燃料の安定供給が重要だ。江別の発電所が利用する燃料のうち、王子グループの森林から供給できる量は1割にすぎない。残りの9割は北海道全域から集める予定だ」(王子グリーンリソース)。なお、王子グループは北海道に12万6593haの森林資源を保有している。

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