300気圧の二酸化炭素を使って火力発電、東芝が燃焼技術を開発電力供給サービス

LNG火力発電は技術開発水準が高く、高効率の発電システムが実用化されている。現在は、燃料電池との組み合わせや、二酸化炭素の分離に適した技術の開発が進んでいる。東芝は300気圧の二酸化炭素を利用した発電システムの開発に成功した。

» 2013年08月06日 14時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 LNG(液化天然ガス)火力は日本の年間発電量(2012年度)の4割以上を占める重要な電力源だ。LNGの特徴は調達先が石油と比較して分散していることだ。中東に依存していない。長期契約が多く、供給が安定しているという特徴もある。最大の特徴は二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないことだ*1)

 発熱量(発電量)当たりのCO2排出量は、石炭が1だとすると、石油は0.8、天然ガス(LNG)は0.5〜0.6となる。同じ電力量を得る場合、石炭と比較してCO2の排出量が半分ということだ。

*1) LNGにも欠点はある。シェールガスを除き、価格が他の化石燃料と比較して高めであることが最大の欠点だ。さらに、−160度程度の冷却が必要であるため、燃料の貯蔵、輸送が難しく、輸送費が高い他、関連する設備に対して初期に巨額の設備投資が必要になる。スポット市場が小さいため、急な需要増に応えにくいという特徴もある。

燃焼温度を高めて効率改善

 LNG火力発電の主力はガスタービンコンバインドサイクル発電だ。2012年時点で国内の総設備容量は3700万kW以上に達している。LNG火力発電ではまず、LNGを燃焼し、高温高圧のガス流を使ってガスタービンで発電する。その後、まだ高温を保っている排気ガスを使って蒸気を作り、蒸気タービンを回す。これによって、効率が高まる。燃焼温度を高めるほど効率が改善し、1100度では43.7%、1300度では46%、2008年以降に登場した1500度では53%に達する。2013年には1600度(54%)が実現、さらに1700度(57%)を目指した開発プロジェクトが進んでいる。なお、ガスタービンの耐熱性から、1700度が限界だと考えられている。

 LNG火力発電には、燃焼温度を高めていく技術開発以外の方向性もある。トリプルコンバインドサイクルは、現在主流の(ダブル)コンバインドサイクルの前段に燃料電池(SOFC)を接続して70%の効率を狙う技術だ。

小型化も狙う

 さらに発電システムの小型化を狙った技術がある。超臨界圧CO2タービン発電だ。開発が始まったばかりの技術であり、エネルギー総合研究所と東京工業大学が、2011年に試作規模のシステムで連続出力を得た段階だ。

 現在は東芝が米国企業3社(NET Power、Chicago Bridge & Iron、Excelon)と2012年6月から共同開発を進めている。2015年に25MW級のパイロットプラントを建設し、2017年には250MW級の商用機の設計と販売を狙う。東芝は高温高圧対応のタービンと燃焼器の開発を担当している。

 超臨界圧CO2タービン発電は、ガスタービンコンバインドサイクルと同程度の発電効率が実現できることに加えて、CO2を分離回収する設備が不要だという特徴がある。「CCS(分離・回収・貯蔵)装置を付けたシステムと比較して、発電効率は高くなると考えている」(東芝)。

 図1では左上で空気から酸素を取り出し、燃料のLNGとともに燃焼器に入れて燃焼する。酸素とLNGから発生するのはCO2と水蒸気だけだ。水は図の右下で分離し、CO2の一部は燃焼器に戻す。通常のガスタービン発電では20気圧程度の圧力で燃焼させる一方、この技術で300気圧を目指す。このような仕組みを採ることで比出力が高まる。なお、仕組み上、窒素酸化物(NOx)が発生しないという特徴もある。

図1 システムの構成図。出典:東芝

 この技術では高圧のCO2を利用する技術がカギになる。東芝は2013年8月、実際のプラント向けの燃焼器の小型モデルを開発し、カリフォルニア州にある試験設備を使って、実運転条件である300気圧下での燃焼試験に成功した(図2)。「高温、高圧のCO2、燃料ガス、酸素を大量に使用するため、試験設備の制約から1回当たりの(試験)燃焼時間は2分程度に限られる。ただし、ロケットエンジン開発の実績からこのような短時間試験でも燃焼器の特性、安定燃焼の継続性などを確認できることは実証されている」(東芝)。

図2 燃焼器の試験の様子。出典:東芝

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