京都の風車落下事故で異常な事態、6基のうち5基に亀裂自然エネルギー(1/2 ページ)

京都府の「太鼓山風力発電所」で3月に発生した風車落下事故の詳細が次第に明らかになってきた。稼働していた6基の風車のうち、事故機を含む5基で亀裂が見つかった。運転開始から12年しか経過していないため、一般的な金属疲労ではなく、風の乱れによる荷重超過が原因とみられている。

» 2013年09月11日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 京都府の文化環境部が運営する「太鼓山(たいこやま)風力発電所」で風車の落下事故が発生したのは、2013年3月12日(火)の19時32分ごろと推定されている。6基ある風車のうちの3号機が丸ごと地上に落下した(図1)。

図1 落下後の状況。出典:京都府文化環境部

 落下後の様子を見ると、4月7日に三重県の「ウインドパーク笠取発電所」で起こった落下事故と似た状態であることがわかる。さらに同様の事故は続き、9月5日には北海道の「苫前グリーンヒルウインドパーク」でも風車が落下した。風力発電の安全性に大きな不安が生じている。

 事故原因の究明が急がれる状況にあって、ウインドパーク笠取では防止策を含めて対応が進み、7月から部分的に運転を再開した。ところが太鼓山風力の場合は事故から6カ月が経過しても原因を特定するに至っていない。しかも事故機を含めて6基のうち5基で同様の部分に亀裂が見つかる異常な事態が起こっている。

「京都議定書」の採択を機に建設

図2 「太鼓山風力発電所」の所在地。出典:京都府文化環境部

 太鼓山風力発電所は日本海に面した丹後半島にある(図2)。半島の中では最も高い標高683メートルの太鼓山の山頂付近に建てられている。世界の温室効果ガスの削減目標を定めた「京都議定書」が1997年に採択されたことを受けて、京都府が環境対策を推進する一環で建設したもので、2001年11月に運転を開始した。

 風車の直径は50メートルあり、1基あたりの発電能力は750kWである。同じ仕様の6基の風車で構成して、合計4.5MW(メガワット)の規模で12年近く発電を続けてきた(図3)。年間の発電量は855万kWhになり、一般家庭で2400世帯分の電力を供給することができる。総事業費は約15億円かかっている。

図3 風車の配置(画像をクリックすると拡大)。出典:京都府文化環境部

事故の直前まで600kWの発電を続ける

 事故が発生した3月12日の19時台には、最大で20メートル/秒の強い風が吹いていた。ただし、この程度の風速は日常的に発生するもので、発電設備に影響が出ることは考えにくい。製造元(オランダのラガウェイ社)の仕様では、60メートル/秒の風速まで耐えられる構造になっている。

 太鼓山に設置した風車は回転数が毎分25回転を超えると停止状態に移行するように設計されている。実際に事故が起こる直前の3号機では25回転に近い状況が続き、途中で3分間ほど停止状態になったことが記録されているものの、再び回転を始めて600kW程度の発電を続けていた(図4)。ところが回転を再開してから15分後の19時32分に突然警報を発して、発電量がゼロになってしまった。

図4 事故を起こした3号機の風況と運転状況(画像をクリックすると拡大)。出典:京都府文化環境部

 翌朝になって地上に落下している状態で発見された3号機は、風車の羽根の部分(ブレード)と発電機を含む中核の部分(ナセル)が一体のまま、高さが46メートルある支柱(タワー)の最上部から破断していた。ちょうどナセルをタワーの最上部に溶接したあたりで亀裂が生じている(図5)。ナセルは1基で38トンの重さがある。

図5 風車とタワーの破断状況。出典:京都府文化環境部
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