街区を越えて電力を融通できるか、つくばエクスプレス沿線で2014年4月からスマートシティ

三井不動産は総面積約272.9haの大規模な事業「柏の葉スマートシティ」を開発中だ。2014年4月にはエネルギー管理を担う「柏の葉スマートセンター」が完成。HEMSなどをつなぎ、街全体のエネルギーを管理するAEMS(エリアEMS)が動き始める。

» 2013年09月30日 14時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 HEMSを導入した戸建住宅や、非常用電源を備えたマンションは珍しいものではなくなってきた。現在は街全体のエネルギー管理をどのように実現するかという段階に入ってきている。

 三井不動産が開発中の「柏の葉スマートシティ」(千葉県柏市)でも、街全体のエネルギー管理に取り組んでいる(図1)。同プロジェクトは約272.9haの土地を対象とした土地区画整理事業だ。2000年8月にプロジェクトが始まり、2023年3月の完成を目指す。計画人口は2万6000人だ。

図1 柏の葉スマートシティの計画地域。出典:三井不動産

 秋葉原とつくばを結ぶ、つくばエクスプレス。秋葉原から30分の位置にある柏の葉キャンパス駅前を中心にした「柏の葉スマートシティ先導エリア」はこのプロジェクトの中核エリアとして2014年7月の完成を目指す。

 約12.7haの土地に約1000億円を投じて4つの街区を作り、2000戸の住宅やホテル(166室)、商業施設(年間来場見込み700万人)、オフィス(約1000人)などを作り込む。

図2 ゲートスクエア部分の外観。出典:三井不動産

 4つの街区のうち、148街区を「ゲートスクエア」と呼ぶ。エネルギーや防災、交通などスマートシティ全体の管理機能を集めた部分だ(図2)。建物ごとに2014年4月〜7月の完成を目指している。

エネルギーの融通を目指す

 ゲートスクエアにはショップ&オフィス棟と、ホテル&レジデンス棟がある。エネルギー管理上重要なのはホテル&レジデンス棟にある「柏の葉スマートセンター」だ(図3)。同センターには大きく2つの機能がある。スマートグリッドと災害対応だ。

図3 柏の葉スマートセンターのイメージ。出典:三井不動産

 同センターは約12.7haの各施設や電源設備をつなぐAEMS(エリアEMS)の拠点となり、日本初の本格的なスマートグリッドの運用を2013年4月に開始する。AEMSは住宅に設置されたHEMSや商業施設からの情報を集約し、まず見える化を実現する。当初は光熱費削減に役立つ具体的な省エネアドバイスを、日々の電力使用状況を分析することで各テナントに提供するといったサービスを始める。「(同センターが完成後の)将来は電力のピーク時の節電や制御を自動化していきたい」(三井不動産)。

 災害発生時の事業継続計画(BCP)と生活継続のために、3種類の電源を管理する。非常用ガス発電(約2000kW)とそれを補助する太陽光発電システム(約200kW)、大型リチウムイオン蓄電池(容量約3800kWh、出力500kW)だ。

 これらの施設によってエネルギー供給網を複線化し、系統電力が得られない場合でもゲートスクエア全体で平時のピーク消費電力の約6割を3日以上、継続的に供給可能だ。満遍なく電力を供給するのではなく、災害情報を集約し、地域のライフライン設備への電力供給を優先する働きもある。

HEMSも導入

 ホテル&レジデンス棟には国際交流住宅と最新型HEMSを標準装備した賃貸住宅からなる「パークアクシス柏の葉」が入る。

 シャープと共同開発した「柏の葉HEMS」を賃貸住宅に標準装備した。AI搭載で快適性を損なわず省エネを実現するアドバイスを提供する他、家電制御も可能だ。「家電制御の目的は、手動でタイマーなどを設定するということではない。対応家電に対して、翌日の予想ピーク需要時に温度設定を自動的に変更するといった自動化に目的がある」(三井不動産)。

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