ピタリと分かる地下世界、ヘリで地熱発電の適地を選ぶ自然エネルギー(1/2 ページ)

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2013年10月からヘリコプター(ヘリ)を利用した地熱資源調査を開始する。これまで見逃されていた地熱発電の適地を捜す他、漠然としていた適地を絞り込むことが目的だ。ヘリを使った3種類の調査を紹介する。

» 2013年10月10日 14時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 地熱発電は再生可能エネルギーの隠れた優等生といえる。24時間365日のうち、約70%の時間は一定の出力で発電が可能だ。これは太陽光(約12%)や風力(約20%)と比較して際だった利点だ。天候を気にせず、ベース電源として電力需要を下支えできる。大出力化も可能だ。資源もある。産業技術総合研究所によれば、日本の地熱資源量は世界第3位の規模(2347万kW)であり、国立公園(特別地域)以外という条件を付けたとしても425万kWある。だがいまだ2%強しか利用できていない。

 地熱発電の課題は調査に着手してから発電が始まるまで10年以上の年月が掛かること。大規模水力発電所を新設する場合と同じぐらいの時間がかかる。もう1つの課題は、そもそも発電に適した場所を見つけにくいことだ。地下にマグマだまりがあればよいという単純な話ではない。マグマの他に2つ条件がある。雨水が長年月をかけて地下に染み込み、地熱貯留層という地下の「地形」の中に地熱流体としてたまっていなければならないのだ。特に地熱流体が存在するかどうかが分かりにくい。

ヘリで大面積を一気に調査

図1 ヘリによる調査地域。出典:JOGMEC

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2013年10月、ヘリコプター(ヘリ)を利用して空中物理探査手法による広域調査を開始すると発表した。対象地域は九州の「くじゅう」と「霧島」だ(図1)。

 「2013年9月30日にヘリが大分空港に到着した。10月9日時点では悪天候もあり調査に着手できていないが、当初計画では10月中旬までにくじゅう地域の約550km2を調査、その後10月下旬までに霧島地域の約280km2を調査する手はずになっている」(JOGMEC)。

 ヘリを使い、3つの手法を組み合わせて適地を探し出す(図2)。重力と電磁気、磁気の3つを一度に調べることが特徴だ。

図2 ヘリによる3種類の調査手法。出典:JOGMEC

 「空中重力偏差法」はヘリ内に搭載した機材によって、岩石密度の分布を調べる探査手法。広い地域にわたる地質構造を一気に把握できる。「空中電磁探査」は地下500mまでの電気抵抗の分布を測定する。高温の熱水や蒸気が存在する地層を見つけることができる。「空中磁気探査」では岩石の磁気的な性質を調べる。地熱や熱水と関係がある火成岩(地熱変成帯)の分布が分かる。

 空中電磁探査と空中磁気探査はヘリからつり下げた装置を使って調査する。手法として興味深いのは空中電磁探査だ(図3の右)。「ヘリからつり下げたループに直流電流を一瞬流し、するに電流を遮断すると地下に誘導電流が発生し、それが地下の深い方向に進んでいく。その結果発生した磁場を測定する」(JOGMEC)。時間的な変化を測定に利用する形だ。

図3 ヘリの装備と外観。出典:JOGMEC

 調査を実施するのはフグロジャパン。「世界的に見て、空中電磁調査と空中磁気調査に必要な機器を両方ともそろえているのは(オランダの)Fugroしかなかったからだ」(JOGMEC)。

 調査はヘリ1機と計測機1セットの組み合わせで実施する。「パイロットと整備士、計測エンジニア2人が組みになって働く。この他、地上で輸送、燃料調達、関連機関との折衝を行う人員を配置する。調査にはJOGMECが国から交付される予算を用いる。調査費用は公表していない」(JOGMEC)。

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