ようやく電気事業法を改正へ、3段階の改革が前進法制度・規制

日本の電力システムを抜本的に改革するための電気事業法の改正案が再び国会に提出された。6月に衆議院で可決されたものの参議院で否決された内容と同じままである。7月の総選挙によって参議院でも与党が多数を占める状態になり、今国会では問題なく法改正が成立する見通しだ。

» 2013年10月16日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電気事業法の改正によって推進する電力システム改革は3段階に分かれる(図1)。第1段階では地域を超えて電力の需給を調整する「広域的運営推進機関」を創設する。推進機関の具体的な役割や体制などを改正案の中に盛り込んでいる。法案が成立すれば、2015年に推進機関を設立して運営を開始する予定だ。

図1 電気事業法の改正によって推進する3段階の電力システム改革。出典:資源エネルギー庁

 さらに改正案には2つの見直し規定を追加した(図2)。1つは「自己託送制度」の見直しで、自家発電設備を保有する企業などが遠隔地にある自社の施設に電力を供給しやすくする。新たに電力会社に対して、企業の自家利用向けに送配電網を提供することを義務づける内容である。

 もう1つの見直しは電力の需給状況が厳しい状況になった時に、企業を中心とする大口需要家に対して政府が発動する「使用制限命令」の弾力化である。従来は命令違反に対して100万円の罰則を与える画一的な命令しか規定していなかったものを、経済産業大臣が状況に応じて命令よりも緩やかな「勧告」を発動できるように変更する。

図2 国会に提出した改正案の概要(本則)。出典:資源エネルギー庁

 電力システム改革の中核になる「小売全面自由化」と「発送電分離」に関しては当初の方針どおり、改正案の附則に「プログラム規定」の形で、法案提出時期と実施時期を記載した。小売全面自由化は2014年に改正案を国会に提出して、2016年をめどに実施する。発送電分離は2015年に改正案を提出するが、実施までには解決すべき課題が多く、2018年〜2020年と幅を持たせて時期を規定した(図3)。

図3 国会に提出した改正案の概要(附則)。出典:資源エネルギー庁

 すでに政府は改正案の成立を前提に、発送電分離までを想定した電気事業者の新しい区分などを検討中だ。6月の通常国会では成立しなかったものの、10月15日から始まった臨時国会で成立することは確実で、電力システム改革に向けた実務的な作業は着実に進み始めている。

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