経産省が対策に乗り出す「怪現象」、地熱発電の出力が下がってしまう自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2013年10月22日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

なぜ問題が放置されてきたのか

 地熱発電所の出力が低下していくことが長年月の運用によって分かっていたのに、なぜ対策が進んでいないのか。「地熱発電研究に対する国の予算措置は、昭和の中ごろから始まったが、ここ10年間が止まっていた。理由は複数ある。多額の資金を投資したのにもかかわらず、地熱発電所を数カ所(5カ所)しか新設できなかったことが1つ。もう1つは約10年前に政策上、原子力に開発資金を投入することが決まり、地熱への資金がなくなったことだ。ただし、311の後、原子力のような危険なエネルギーよりも地熱などの方が好ましいということになり、足元を固める今回の予算措置に至った」(資源エネルギー庁)。

 今回の予算措置というのは、新規に予算措置が取られた2013年度の「地熱発電技術研究開発事業」の9億5000万円だ。開発事業は3つあり、そのうち、今回の「地熱貯留層評価・管理・活用技術開発」に約3億円を割り当てる*1)

*1) このほか地熱貯留層探査技術開発に2億円、高機能地熱発電システム技術実証開発に4億5000万円を使う。

どのような技術を開発するのか

 今回の予算では、図2のうち、涵養井を使った出力低下抑制技術を開発する。図2にある還元井は国内では1カ所を除く全ての地熱発電所で実施中だ。取り出した熱水をほぼ全て地中に戻しており、これ以上拡大する余地がない*2)

 実施するのは、今回の事業の公募に応じた冒頭の柳津西山地熱発電所。

 JOGMECは、3つの団体に技術開発を委託する。柳津西山地熱発電所で蒸気供給を担当している地熱技術開発は、全体計画・設計と貯留層挙動予測を担う。全体計画には地質調査によって、涵養井の位置を決める役割が含まれており、貯留層挙動予測として数値シミュレーションを実行する。奥会津地熱は建設・工事を担当する。試験設備の設計・工事の他、人工涵養試験を進める。涵養井を1本掘り、そこに河川水を流し込む。河川水にはトレーサーを混ぜ込む。注入してから生産井に到達するまでの時間や規模などを計測するためだ。産業技術総合研究所は地質調査とモニタリングを実行する。蒸気の圧力や重力を測定する。地熱貯留層に含まれる水の比率が変化すると、重力の値がごくわずかに変化する。これを検出して見えない地中を見通す。

 2013年度と2014年度に試験設備の設置を終え、2015〜2017年度に実証試験を進める。5年間の技術開発だ。

*2) 熱水にはさまざまな鉱物、化学物質が溶け込んでいる。このため、熱水の温度を下げたとしても排水が環境基準をクリアすることができないという理由もある。

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