北海道の風車落下事故、修理時のミスと断定も検査結果に不安残る蓄電・発電機器

2013年9月5日に北海道の苫前町で発生した風車の落下事故に関して、運営事業者のユーラスエナジージャパンが最終報告書を監督官庁に提出した。中間報告の時点で明らかになった修理時のミスによるものと断定したが、検査結果を見ると今後に向けた不安な面も残されている。

» 2013年12月03日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 「苫前グリーンヒルウインドパーク」の所在地。出典:ユーラスエナジージャパン

 「苫前(とままえ)グリーンヒルウインドパーク」(図1)で風車の破損・落下事故が発生したのは9月5日の早朝のことだった。運営事業者のユーラスエナジージャパンは即座に原因究明に乗り出し、1カ月後の10月4日に中間報告書、さらに11月15日に最終報告書を北海道産業保安監督部に提出した(中間報告時の関連記事:「風車の修理から1年3カ月で落下、メーカーの設計に従わず主軸が破断」)。

 事故の原因は中間報告の段階から、風車の修理時にメーカーの設計と異なる形状に変更してしまったことを推定していた。その後の各種検査によって正式に原因として断定し、最終報告書に詳しくまとめた格好だ。

 事故機は20基あるうちの1基で、風車の直径は54メートルの大きさがあり、風車の主軸の位置は地上から45メートルの高さにあった(図2)。1MW(メガワット)の発電能力で1999年から稼働していたが、2012年5月に風車の軸受部分が破損したために、予備の部品と交換していた。

図2 事故機の風車の外形。出典:ユーラスエナジージャパン

 実は、この予備の軸受部分は別の風車に使われていたもので、摩耗によって金属が溶ける「焼き付き」を起こした後、修理して予備用に保管していたものだった。ところが修理時の対応を誤り、メーカーの設計と異なる形状に加工してしまったことが、今回の破損事故につながったと考えられている。

 最終報告書では、風車の主軸を取り付ける部分に必要な曲面加工が施されないままの状態で、事故機に取り付けられていたと断定した(図3)。そのために主軸と軸受の該当する部分に想定外の過剰な力がかかり続けた結果、疲労亀裂を起こして破断した、という分析である。

 ユーラスエナジージャパンでは破断した断面の状態をレーザー顕微鏡などで詳細に検査したほか、さまざまな構造解析を実施して原因の究明を図った。修理前に10ミリメートルの曲率が施されていた部分は1.72ミリメートルの小さな曲率になっていたことも確認できた。

図3 事故機の主軸の断面図。上がメーカーの設計時、下が修理後。出典:ユーラスエナジージャパン

 事故の原因究明と並行して、同社が運営する他の風力発電所を含めて事故機と同形の25基に対して超音波による傷の検査を実施した。超音波検査で亀裂が見つかった設備はなかったが、苫前の19基(事故機を除く)のうち8基は正常な状態とは異なる結果になり、判定が困難な状態だった。

 その後の追加検査で6基には問題ないことを確認できたが、2基は再度の追加検査を必要とする状況にある。1基には主軸の取り付け部分に長さ12センチメートルの傷が付いていた。事故機で問題になった曲面部分であり、今後の検査結果が気になるところだ。

 ユーラスエナジージャパンは修理方針を徹底するなどの再発防止策を2013年12月末までに実施する。そのうえで安全を確認できた設備から順次運転を開始する方針である。最終報告書で明らかにしているが、これまでも多数の風車で主軸の軸受部分に損傷が発生して修理を実施してきた。構造上の問題がないのか、根本的な見直しも必要ではないだろうか。

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