電力市場の競争を促進するためには、地域を超えて電力を販売できる環境の整備が不可欠だ。2015年に発足する「広域的運営推進機関」の重要な役割のひとつが、地域間を含めて全国レベルの需要と供給を調整することにある。特に東京−中部間の連系能力を改善することが求められている。
第5回:「第1段階の広域機関の設立準備が進む、2014年1月に組合を発足」
3段階で進める電力システム改革の第1段階の準備が、年明けから本格的に始まる。すでに法律で決まっている「広域的運営推進機関」の業務を2015年から開始するために、運営体制や重点施策の検討が着々と進んでいる(図1)。
広域的運営推進機関は電力の需給状況を全国レベルで調整する役割を担う。そのためには地域間で機動的に電力を融通できる機能が欠かせない。日本では地域ごとに電力会社が送配電ネットワークを所有・運営していて、地域間をつなぐのは「連系線」だけである(図2)。
この連系線をいかに効率的に運用できるかで、全国レベルの需給調整能力は大きく変わる。さらに電力市場を活性化するうえでも、数多くの発電事業者や小売事業者が地域を超えて電力を販売できるように、連系線が果たす役割は極めて重要になってくる。
実は連系線を通じて地域間で送り合える電力量は十分に足りていない。特に問題なのは東京−中部間だ。国内で唯一の電力取引所である「日本卸電力取引所」よると、地域を超えた電力取引のうち、連系線の問題で実施できなかったケースが東京−中部間では相当な割合にのぼる(図3)。
その大きな要因になっているのが、電力会社に割り当てられている「マージン」だ。電力の周波数が違う東京−中部間の連系線は、長野県と静岡県にある3カ所の周波数変換設備(FC)でつながっている。3カ所のFCで変換できる電力量は合計で120万kWだが、そのうちの80万kWを東京電力が予備用のマージンに確保している(図4)。ほかの事業者は残りの40万kW分しか使うことができない。
電力会社のマージンは地域内の電力が不足する事態に備えて確保しているもので、東京の場合は5000万kW弱の最大電力に対して3%分の160万kWの電力を、隣接する中部と東北から連系線を通して受けられるようにしている。しかし実際にマージンがフルに必要になる状況はほとんどなく、もっと柔軟に運用すれば、ほかの事業者に割り当てる量を増やすことが可能になる。
こうしたマージンの見直しや、連系線を各事業者に割り当てるルールづくりを進める必要がある。広域的運営推進機関が発足する2015年には、現在よりも効率的に地域間の連系線を利用できるようになっているはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.