石炭をガス化して発電する設備、東京電力が福島県内で50万kW級を2基計画電力供給サービス

東京電力が火力発電の増強に向けて、新たに50万kW級の設備の建設を福島県内の2カ所で計画している。現在の石炭火力発電で最高の効率を発揮する「石炭ガス化複合発電」を採用して、従来方式と比べてCO2排出量を15%削減する試みである。早ければ2020年にも営業運転を開始する。

» 2013年12月16日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「福島第一原子力発電所」に代わる新しい火力発電設備が、合計100万kWの規模で2020年にも動き出す。建設予定地は福島県内の2カ所に分かれていて、1カ所は東京電力の「広野火力発電所」、もう1カ所は東京電力や東北電力が出資する常磐共同火力の「勿来(なこそ)発電所」の構内である(図1)。

図1 福島県内にある東京電力の主な発電所(常磐共同火力は東北電力などとの合弁会社)。出典:東京電力

 いずれも石炭火力発電で最先端の「IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle):石炭ガス化複合発電」を採用した大規模な設備になる。IGCCは石炭をガスに転換してから、ガスタービンと蒸気タービンで2回の発電を可能にする(図2)。同じ量の石炭を使って多くの電力を作ることができるため、燃料費とCO2排出量の両方を削減する効果がある。

 東京電力が福島県内に新設するIGCC方式の発電設備は2カ所ともに50万kW級を予定している。現在のところ国内で営業運転中のIGCCでは、同じ勿来発電所で稼働している25万kWが最大である。新たに50万kWの建設が2カ所で始まれば、他の電力会社にも導入計画が広がることは確実だ。

図2 従来の石炭火力発電と「石炭ガス化複合発電(IGCC)」。出典:東京電力

 勿来発電所で稼働中の25万kW級のIGCCはガスの燃焼温度が1200度で、送電端効率(燃料の熱エネルギーから送電開始時の電気エネルギーへの変換率)は42%に達する。これに対して新設の50万kW級は燃焼温度を1500度に高めて、送電端効率を48%へ引き上げる(図3)。従来型の石炭火力は36〜38%程度であることから、効率が3割くらい改善する。その分だけ燃料が少なくて済み、CO2排出量も約15%削減できる見込みだ。

図3 石炭火力発電の効率を向上させる技術の推移。出典:東京電力

 東京電力は2020年代の初めに、広野と勿来の2カ所で50万kW級のIGCCの営業運転を開始したい意向である。ただし大規模な火力発電設備を建設するにあたっては、国や自治体を交えて環境影響評価のプロセスを実施することが義務づけられている。今のところ国は建設計画をバックアップする方針だが、はたして地元の自治体や住民の理解を得ることができるか。東京電力に対する信頼感が気になるところだ。

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