「路面電車」が使う電力の40%を得る、伊予鉄道が太陽光で自然エネルギー

愛媛県で事業を運用する伊予鉄道が、太陽光発電事業を開始した。年間に発電する電力量は自社の路面電車の消費電力量の40%に達するという。鉄道のエネルギー効率を広い意味で高める取り組みだ。

» 2013年12月20日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 愛媛県東温市と発電所の位置

 鉄道は最もエネルギー効率が高い大量輸送機関だ。それにもかかわらず、各社がさまざまな手法でさらに必要なエネルギーを引き下げようとしている。LED照明の導入、高効率なモーターの採用、回生電力の利用……。最も新しい取り組みが太陽光発電だ。

 愛媛県で事業を運営する伊予鉄道は、太陽光発電を開始した(図1)。「約2年前に企画を開始し、再生可能エネルギーを利用する太陽光発電所を立ち上げた。今後も社有地を含めて拡大を検討する」(伊予鉄道)。

 年間に発電する電力量は、同社の運営する路面電車の消費電力量の約40%に相当するという。発電した電力は固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を四国電力に売電するものの、結果的に電力事情を改善したことになる。効果的な実践だといえよう。

図2 いよてつ東温ソーラー発電所の外観。出典:伊予鉄道

 同社が3億9000万円を投じて立ち上げたのは、「いよてつ東温ソーラー発電所」(愛媛県東温市樋口、図2)。出力1MW、想定年間発電量120万kWhであり、売電収入は年間約4000万円。

 伊予鉄道が本社を置く松山市から東温市へは、同社の横河原線(営業距離13.2km)が走っており、終点の横河原駅から1kmほど北上した立地を選んだ。同社のバス練習場跡地(約2万1300m2)である。川沿いにあり、日照を遮る建物もない。

 2013年7月に着工し、2013年12月に発電を開始。設計・調達・建設(EPC)は四国電力グループの四電工に依頼した。

97年前に電力事業を手掛けていた

 なお、伊予鉄道は過去に発電事業を手掛けた歴史がある。第一次世界大戦の最中、1916年に伊予水力電気と合併し、電力事業を開始。伊予鉄道電気に社名を変更後、電力会社を8社吸収。愛媛県の他、高知県と徳島県の一部に電力を供給してきた。第二次世界大戦中の1942年に、国家総動員法に基づく配電統制令により電力部門を分離している。実は分離した四国配電は現在の四国電力に至っている。四国電力は1951年に四国配電と日本発送電四国支社が合併して成立した企業だからだ。

 伊予鉄道が手掛ける発電事業は、実に71年ぶりとなる。

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