みかんのバイオマスに続け、南予の風力と東予の太陽光エネルギー列島2013年版(38)愛媛

愛媛県には3つの地方があって、それぞれで適した再生可能エネルギーが分かれる。瀬戸内海に面した「東予」では太陽光、九州と向かい合う「南予」では風力発電所の建設計画が相次いでいる。みかんなどの食品廃棄物を使ったバイオマスの活用は松山市を中心に「中予」で盛んだ。

» 2013年12月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 お隣の香川県が「うどん」ならば、愛媛県の特産品は「みかん」である。日本有数のみかんの産地にはジュース工場もあり、大量の搾りカスが出る。この搾りカスからバイオエタノールを製造する実証プラントが、松山市内の工場で2010年から稼働している(図1)。

図1 みかんの搾りカスを使ったバイオエタノール製造プラント。出典:愛媛県県民環境部

 エタノールはジュース工場のボイラーの燃料になるほか、みかんの栽培に使う農業機械にも利用する。さらにエタノールからは香料を作ることができて、最後に残ったカスは肥料になる。みかんのバイオマスを最大限に活用した循環型の仕組みができあがっている。

 みかんの搾りカスのような食品廃棄物を利用したバイオマスの取り組みは愛媛県の中部地域で先行して進んでいる。松山市に隣接する東温市でも、公共施設や家庭から集めた使用済みの天ぷら油をバイオ燃料に精製して、学校給食センターの調理用ボイラーなどで再利用している。

 愛媛県は自然環境や風土の違いから、3つの地方に分かれて特色がある。かつては「伊予」の国であったことから、「東予(とうよ)」「中予(ちゅうよ)」「南予(なんよ)」と呼ばれる(図2)。このうちバイオマスが盛んな地方は中予で、例えば松前町では特産品の「ひまわり」の種からバイオ燃料を作る事業を推進している。

図2 愛媛県を構成する3つの地方。出典:今治市役所

 一方で複雑な海岸線が続く南予では、絶好の風況を生かせる風力発電のプロジェクトが3カ所で並行して進んでいる。最南部の愛南町と宇和島市にまたがる森林地帯では「槇川正木(まきがわまさき)ウィンドファーム」の計画がある。10基の大型風車を設置して、25MW(メガワット)の発電能力を発揮する予定だ(図3)。現在は建設前の環境影響評価の段階で、順調にいけば3年後の2016年12月に運転を開始できる。

図3 「槇川正木ウィンドファーム」の建設予定地(画像をクリックすると拡大)。出典:ガイアパワー

 この一帯は西側に海があって、場所によっては年間の平均風速が8メートル/秒を超える(図4)。風力発電には打ってつけの場所である。平均風速が8メートル/秒に達すると、1MWの発電設備で年間に300万kWh程度の電力を生み出すことができる。25MWの規模があれば、一般家庭で約2万世帯分に相当する発電量になる。

図4 建設予定地の周辺の風況。出典:ガイアパワー

 同じ地域内で四国電力グループが計画中の別の風力発電所は、8基の大型風車を使って19MWを発揮する。さらにもう1つは地元の企業が11基の大型風車で22MWの発電設備を建設するプロジェクトを推進中だ。いずれも環境影響評価の段階にあり、運転開始は2016〜2017年になる見込みである。

 3つの風力発電所が稼働すると、一挙に5万世帯分を超える電力を供給できるようになる。平地の少ない地域だけに、再生可能エネルギーの中では風力発電が有望だ。現在のところ愛媛県の風力発電の導入量は全国で11位だが、今後はランクアップが期待できる(図5)。

図5 愛媛県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 風力の南予に対して、瀬戸内海の温暖な気候に恵まれた東予は太陽光発電が適している。特に沿岸部の工業地帯でメガソーラーを建設する動きが活発になってきた。西条市にある今治造船の工場では17MWの発電設備を建設中で、2014年3月までに運転を開始する(図6)。完成すれば四国で最大のメガソーラーになる。

図6 「今治造船西条工場」(左)とメガソーラー建設予定地(右)。出典:今治造船、JFEエンジニアリング

 それに続いて、さらに規模の大きいメガソーラーが同じ西条市内で2015年4月に稼働する。日新製鋼の主力工場である「東予製造所」の遊休地を使って、23MWの発電設備を建設する計画だ(図7)。南予の風力よりも一足先に、東予に降り注ぐ太陽光が大量の電力を供給し始める。

図7 「日新製鋼東予製造所」に建設するメガソーラーの完成イメージ。出典:住友商事

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −四国編−」をダウンロード

2015年版(38)愛媛:「造船の町でメガソーラーとバイオマスが拡大、山の資源も発電に生かす」

2014年版(38)愛媛:「リアス式の海岸に風力発電、50基を超える風車で自然と共生」

2012年版(38)愛媛:「ミカンやタオルからバイオマスを、風力と太陽光も拡大中」

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