愛媛県の西側一帯は海の近くまで山が迫り、強く吹きつける風を利用して風力発電所が数多く運転中だ。新たな開発計画も相次いで始まったが、建設までに必要な環境影響評価の壁が高い。電力会社による導入量の制限も乗り越えながら、自然エネルギーを拡大する発電事業者の挑戦は続く。
愛媛県には「風車のまち」がある。四国の最南端にある伊方町(いかたちょう)だ。ノコギリのような形をした細長い半島に、50基を超える風車が動いている(図1)。発電能力を合計すると68MW(メガワット)に達する。
風力発電の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を20%として計算すると、年間の発電量は約1億2000万kWhにもなる。一般家庭の電力使用量に換算して3万世帯を超えて、伊方町の総世帯数(4900世帯)の6倍以上に相当する。
その中で最大の風力発電所は半島の先端で運転中の「三崎ウインドパーク」である。20基の風車が丘陵に連なる光景は壮観だ(図2)。四国電力グループが2007年に運転を開始した。続いて2つの風力発電所が2008年と2010年に同じ伊方町内で運転を開始したが、それ以降に稼働した風力発電所は愛媛県全体でも見あたらない。
とはいえ新しい風力発電所の開発計画は県内で数多く進んでいる。発電能力が10MWを超える風力発電所の建設にあたっては、自然環境などに対する影響を事前に調査する「環境影響評価」が2012年から義務づけられたために、運転開始までの期間が大幅に伸びている状況だ。
進行中のプロジェクトではJ-POWER(電源開発)の「南愛媛風力発電所」が最も早く運転を開始する可能性が大きい(図3)。南部の宇和島市の山林に9基の大型風車を設置して、20MWの電力を供給する計画である。2014年9月に稼働する予定だったが、12月の時点でも運転開始には至っていない。環境影響評価に時間がかかり、当初の計画よりも遅れている。
現時点で環境影響評価の手続きを進めている風力発電所の開発計画は愛媛県内で6件ある。このうち4カ所は四国電力が実施する「風力発電導入拡大プロジェクト」の対象に入っている。
風力発電は天候の影響によって出力が変動することから、電力会社の送配電ネットワークに接続できる容量が限られてしまう。この問題を解消するために、中日本・西日本の電力会社6社が協力して需給バランスを調整する計画だ(図4)。
四国電力からは関西電力と中部電力に最大で20万kW(200MW)程度の電力を送ることができる。建設中の7カ所の風力発電所が対象に選ばれて、そのうちの4カ所が愛媛県内にある。宇和島市で1カ所、さらに宇和島市に隣接する西予市(せいよし)で3カ所の開発計画が進んでいる。4カ所を合計すると発電能力は108MWに達する。
固定価格買取制度による導入状況を見ても風力発電が目立つ。運転開始前の状態にある風力発電設備の規模は全国で10位に入る(図5)。このほかにも太陽光とバイオマスが着実に増えてきた。すべての発電設備が運転を開始すれば、愛媛県の家庭が使用する電力の4分の1を供給できるようになる。
太陽光発電では地元の今治造船が四国で最大の17MWのメガソーラーを自社工場の敷地内に建設して、2014年2月から運転を開始した(図6)。創業から110年以上の歴史がある企業が再生可能エネルギーの拡大に取り組んでいる。
*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −四国編−」をダウンロード
2016年版(38)愛媛:「いちご栽培に水素を活用、工場の廃熱や廃液もエネルギー」
2015年版(38)愛媛:「造船の町でメガソーラーとバイオマスが拡大、山の資源も発電に生かす」
2013年版(38)愛媛:「みかんのバイオマスに続け、南予の風力と東予の太陽光」
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