東京電力はどこまで変わるか、改革意欲を示す3カ年計画電力供給サービス(2/2 ページ)

» 2014年04月02日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
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ガスの小売を加えて総合エネルギー会社へ

 自由化の影響をより大きく受ける送配電事業と小売事業でも、収益改善に向けた大胆な実行計画を掲げた。特に注目すべきはスマートメーターを活用した新しい料金メニューの導入と、ガスを組み合わせた総合的なエネルギーサービスの展開である。

 送配電ネットワークを進化させるためのスマートメーターは2014年度から家庭向けに設置を開始して、2016年度までの3年間で合計1000万台を取り付ける。特に2016年度から設置ペースを加速させて、2020年度までに2700万を超える全顧客に導入する方針だ(図4)。全国の電力会社10社の中では圧倒的に多い顧客を抱えている中で、他社よりも早く全数導入体制を整える。

図4 スマートメーターの設置計画。出典:東京電力

 さらにスマートメーターを使ってガス・水道を含めた共同検針にも取り組む。東京ガスなどと連携して2015年度中に実証試験を開始する。実現すればスマートメーターの設置コストと検針コストを削減できることに加えて、電力・ガス・水道を統合した新しいサービスを提供できるようになる(図5)。

図5 総合エネルギーサービスの展開イメージ。出典:東京電力

 小売事業では関東を中心とする従来のサービス区域を越えて、全国各地で電力の販売を展開していく。地域ごとに有力企業と提携することを検討中だ。電力と同時にガスの小売全面自由化も実施が見込まれることから、電力とガスを組み合わせた販売活動にも力を入れる。

 すでに企業向けのガス小売は自由化されているため、当面は製造業などを対象に、火力発電用に調達したLNGを外販する。ガスの販売事業で2014年度に1100億円、3年後の2016年度には1600億円の売上を目標に掲げた。

「みらい型料金メニュー」を2015年度から

 家庭向けには「みらい型料金メニュー」を新設して、小売の自由化後も顧客の囲い込みを図る。この新しいメニューはスマートメーターを設置した家庭を対象に提供するもので、2014年度中に詳細を発表する予定だ。時間帯別の使用量に応じた割引プランを拡大させるほか、夏の昼間などに節電に協力するデマンドレスポンスのインセンティブも盛り込む(図6)。

図6 小売事業の拡大戦略。出典:東京電力

 東京電力はインターネットで電気料金計算やメニュー選択ができる「でんき家計簿」を提供中で、このサービスを拡充して「みらい型料金メニュー」を利用できるようにする。2015年度中に新メニューの予約受付を開始して、でんき家計簿の会員数を2016年度末までに1000万まで増やすことを目指す。さらにガスの小売が自由化されれば、電力とガスを組み合わせたメニューも加えることが可能になる。

 国内の電力の3割以上を供給する東京電力の取り組みは、市場全体を変革するのに十分なインパクトを持つ。3年間のアクション・プランが終了する2016年度末の段階で、東京電力の事業構造がどれくらい変化しているか。それによって日本の電力市場の改革スピードが決まると言ってもよい。

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