目指せ水力「1億kWh」、北陸電力のチャレンジ自然エネルギー

2020年度までに水力発電の出力量を1億kWh増やす計画を北陸電力が発表した。発電所の新設はもちろん、既存の発電所にも改良を施す。2014年3月末には早速2つの既存発電所の出力を高めた。

» 2014年04月08日 15時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 水力発電の増強計画値 出典:北陸電力

 北陸電力は電力の安定供給のため、再生可能エネルギーの導入量を増やそうとしている。水力発電では2007年度の年間発電電力量に対して、2020年度までに8000万kWh増やす計画だった。これを新たに1億kWhとした(図1)。2014年3月27日に公開した「2014(H26)年度 北陸電力グループの取組み」である。

 1億kWhを実現する手法はさまざまだ。まず、新しい水力発電所を建設する。2016年度には26年ぶりに水路式の発電所が完成する。片貝別又発電所と呼ぶ(関連記事)。

 既存の発電所の改良も進める。2014年3月28日には猪谷(いのたに)発電所と真名川(まながわ)発電所の出力が増加可能になったと発表した*1)。具体的にはどのように増強したのだろうか。

*1) 電気事業法の規定に従って、経済産業省中部経済産業局に届け出た。

設備を改善しなくても増強可能

図2 猪谷発電所(図右上)と真名川発電所の位置

 猪谷発電所は富山市の岐阜県境側に立地する水力発電所(図2、図3)。完成したのは戦前の1929年だ。神通川水系の水を使い、出力2万2900kWを得ていた。

 「2013年9月9日に既存の出力を再測定し、機材に手を入れなくても出力を増加できると判断。水車と発電機を分解点検後、2014年3月26日に保安上必要な試験を実施した」(北陸電力)。使用中の立軸単輪渦巻フランシス水車と、立軸三相交流同期発電機(図4)をそのまま使い、出力を700kW高め、2万3600kWに増強した。年間発電量が約150万kWh増える計算だ。

図3 猪谷発電所の外観 出典:北陸電力
図4 猪谷発電所の発電機 出典:北陸電力

水車の部品を置き換えて出力アップ

 真名川発電所(福井県大野市)は1977年に完成し、2010年に福井県から譲渡を受けたもの(図5)。九頭竜川水系の水を使う発電所であり、水車と発電機の方式は猪谷発電所と同じだ。

 真名川発電所では水車の部品である水車ランナーを置き換えることで、出力を200kW高め、従来の1万4000kWから1万4200kWへと増強できた。年間発電量は約130万kWh増える。

図5 真名川発電所の外観 出典:北陸電力

 「水車ランナーは定期更新が必要な設備であり、更新の機会に新設計品を導入したことで出力を増やすことができた」(北陸電力)。

 図6にフランシス水車が内蔵する水車ランナーを示す。フランシス水車はカタツムリのような形をしたケーシング内を水が通り、水車ランナーの全外周から水が流れ込む。流れ込んだ水は、多数のランナー羽根を押した後、ランナーの中央部から排出される仕組みだ。つまり水車ランナーは、風力発電所でいうブレード(羽根)に相当する。水車ランナーの改良が出力アップにつながる理由だ。

図6 フランシス水車を構成する水車ランナー 出典:北陸電力

 なお、2つの発電所で増えた年間発電電力量(280万kWh)を太陽光発電所で実現しようとした場合、約2.6MWのメガソーラーを建設する必要がある。

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