2MWhの蓄電池を省エネと防災に、地域と一体化した東北の工場エネルギー管理(2/2 ページ)

» 2014年06月24日 11時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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太陽光発電システムもある

 今回の計画で新設するのは、大型蓄電池とガスエンジン発電機、プラグインハイブリッド車(PHEV)、工場エネルギー管理システム(FEMS)だ。

 大型蓄電池として、米General Electric(GE)の「デュラソン(Durathon)バッテリー」を採用した*3)。ナトリウム(Na)とニッケル(Ni)からなる蓄電池であり、容量2MWh、出力は500kWだ。「(大容量で)設置面積が同容量の鉛蓄電池の2分の1にできるため採用した」(積水ハウス)。

 発電機としてJFEエンジニアリングのガスエンジン発電機を選んだ。「空冷ラジエーターを採用しているため、災害時に断水したとしても電力を得ることができる」。液化石油ガス(LPG)で動作し、出力は225kW。PHEVは1台を導入し、充電設備も設ける。災害時の電力供給源や初動対策用の移動手段として用いる。

 この他、従来設置していた太陽光発電システム(出力713kW、図3)のうち、20kWをスマートエネルギーシステムと連動させる。

*3) デュラソンバッテリーは2010年にGEが市場に投入した溶融塩電池システム。GEによれば寿命が20年と長い。角柱状のセルを組み合わせたモジュール構造によって容量を増やすことが可能。1つのセルは、ニッケル(Ni)などからなる正極と、溶融塩からなる負極が、ベータアルミナ固体電解質からなるセパレーターで分離された構造を採る。ベータアルミナは、電池の構成元素のうち、ナトリウムイオン(Na)のみを通す。充電した際の反応は以下の通り。正極側の塩化ナトリウム(NaCl)から塩化物イオン(Cl)が分離し、正極のニッケルと結合して塩化ニッケル(NiCl2)が生成する。ナトリウムイオンは正極から負極に移動する。放電時は逆の反応が起きる。

図3 東北工場に設置済みの太陽光発電システム 出典:積水ハウス

住民を助ける防災

 防災未来工場化計画では、東北工場が近隣エリアの避難所となり、最低限の電気と水、ガスを確保できる。防災備蓄拠点でもある*4)。同社の住宅のオーナー以外に被災者と避難者用の備蓄を工場内に分散して確保している(図4)。

図4 工場内各所の防災備蓄 出典:積水ハウス

 同社は2013年9月に色麻町と防災協定を締結した。「行政と1つの工場・企業ががっちり組んで防災協定を結ぶ取り組みは国内にも少ない。さらに色麻町では、他の企業や(町内に演習場がある)自衛隊との協定を結んでおり、これらを当社の取り組みと融合していきたい。地域全体の防災力を高めることができるからだ。モノ(設備)だけでは助け合いにつながらない。平常時に地域と支え合っていれば、災害時にも強いと考えている」(積水ハウス)。

*4) 同社は2011年3月に起こった東日本大震災の際、地震発生3時間後から備蓄物資の送付を開始している。発生後約1カ月で震度5強以上のエリアに建つ17万7488棟の同社の既築物件の状況確認と復旧工事も完了した。

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