農村の再生は太陽光でスマートアグリ、砂防ダムに小水力発電をエネルギー列島2014年版(19)石川(1/2 ページ)

火力と原子力の依存度が大きい石川県だが、農村や山間部を中心に再生可能エネルギーが広がってきた。県内で増加している耕作放棄地を再生するために太陽光発電の導入を進める一方、最先端の発電技術を利用した温室栽培にも取り組む。山間部の砂防ダムでは小水力発電所の建設が始まる。

» 2014年08月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 石川県内には北陸電力の大きな発電所が2つある(図1)。1つは能登半島の東側にある石炭火力の「七尾大田(ななおおおた)火力発電所」、もう1つは半島の西側にある「志賀(しか)原子力発電所」だ。それぞれで発電能力は100万kWを超える。現在のところ志賀原子力発電所は運転を停止しているが、北陸電力は再稼働に向けた適合性審査を先ごろ国に申請した。

図1 石川県の主な発電所の立地状況。出典:石川県企画振興部

 志賀町の南側に隣接して、人口2万3000人の羽昨市(はくいし)がある。市の面積の4割近くを水田が占める農業の盛んなところだが、最近は農家が減って「耕作放棄地」が目立ってきた。その解決策の1つとして、太陽光発電を組み合わせた収益性の高い事業モデルを導入する構想が進んでいる。

 地元の農業組合である「JAアグリはくい」が耕作放棄地を集積して再整備に乗り出す。羽昨市内にある50万平方メートルに及ぶ農業地区で、9割が耕作放棄地になっている場所がある。その地区を対象に農地の地権者から土地を借り受けて再生させる計画だ(図2)。同時に農地を活用した営農型の太陽光発電事業も実施して売電収入を得られるようにする。いわゆる「ソーラーシェアリング」である。

図2 羽昨市の農地再生モデル(上。画像をクリックすると拡大)、耕作放棄地(下)。出典:石川県総務部、石川県企画振興部

 このプロジェクトはJA(全国農業協同組合連合会)グループが運営する「農山漁村再エネファンド」の第1号の事例になる見込みで、ファンドの資金を活用して太陽光発電事業を推進していく。発電規模などの詳細は明らかになっていないが、ソーラーシェアリングが成功すれば、石川県内だけではなく全国の耕作放棄地を再生するモデルになるだけに、関係者の期待は大きい。

 太陽光発電を農業に生かす試みでは、環境プラントメーカーが県の工業試験場などと共同で開発中の「スマートアグリシステム」も注目を集める。温室栽培を対象にしたシステムで、発電効率の高い追尾集光式の太陽光発電を利用して、温室内の温度や光量などを最適な状態に維持することができる(図3)。

図3 追尾集光式太陽光発電と熱電発電を組み合わせた「スマートアグリシステム」。出典:石川県企画振興部

 さらに「熱電発電」と呼ぶ方法を併用する。追尾集光式の太陽光発電では、温度の上昇を防ぐために冷却液を循環させる必要がある。この冷却液が沸騰することで蒸気を発生させて、その蒸気で発電する仕組みだ。太陽光とのダブル発電によって、自然エネルギーを高い効率で電力に変換することが可能になる。

 プロジェクトには小松市のJAも参画して、実際に温室に適用しながら効果を検証する予定だ。小松市の特産品であるトマトの温室栽培などに利用する。高効率の発電システムで電気代を削減しながら、従来よりも収穫時期を拡大して収穫量を増やせる効果が見込める。実証結果が待たれるところである。

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