東京電力は2016年4月に始まる小売全面自由化に向けて、中核の営業料金システムにドイツSAP社のソフトウエアを採用する。SAPの製品は欧米をはじめ世界各国の電力会社やガス会社など2700社に導入実績があり、自由化に対応して料金を柔軟に設定できる機能などが盛り込まれている。
東京電力が採用したSAP社のソフトウエアは「SAP for Utilities」で、電力会社やガス会社の事業を総合的に支援する機能を体系的にそろえている(図1)。最初の導入段階では小売に必要な契約管理から料金プランの提案、請求・支払管理までの機能を実装する見通しだ。
新たに営業料金システムを導入するのは東京電力のカスタマーサービス・カンパニーである。2013年4月に発足した小売事業部門で、これから自由化される家庭や商店などの顧客を約2900万も抱えている。さらに自由化後は小売の全国展開を目指すほか、ガスと組み合わせた総合的なエネルギーサービスを準備中だ(図2)。
SAPの日本法人であるSAPジャパンは2014年10月に、SAP for Utilitiesをベースに日本の小売事業に対応させた「モデルカンパニー リリース1.0」を発表した。このソフトウエアには新規契約の登録機能をはじめ36種類の業務プロセスが組み込まれている。電力会社は業務プロセスのテンプレートに従ってシステムを構築することができるため、多岐にわたる業務でも短期間に稼働できるメリットがある。
SAPジャパンは2015年にも発電や送配電に必要な機能を順次リリースするほか、人事や財務など管理部門向けの機能を加えて、電力会社の発送電分離までを一貫して支援できるようにする。東京電力が小売の中核システムにSAPのソフトウエアを採用したことにより、発電と送配電、さらに持株会社でも同じSAPの製品を導入する可能性が大きくなった。
SAP for Utilitiesは世界各国の電力会社やガス会社など約2700社に導入実績がある。世界に先駆けて1990年代に電力の自由化を実施した英国では、最大手のブリティッシュガスなどが採用している。ブリティッシュガスはシステムを駆使した積極的な営業を展開して、2013年の時点で英国内の電力市場で25%、ガス市場で38%のシェアを獲得している。
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