1990年代に電力とガスの小売全面自由化を実施した英国で、かつて国営企業だったブリティッシュガスが電力でも25%のシェアを獲得している。IT(情報技術)を駆使して、ガスと電力のセット料金プランの提案やポイントサービスとの連携などを積極的に推進してきた効果が大きい。
ブリティッシュガスは1998年のガス小売全面自由化に合わせて電力市場に参入した。参入から15年が経過した2013年の時点で、家庭のガス契約数は860万件、電力は665万件にのぼる。英国内のシェアはガスが38%で、電力は25%を占めている。ガスと電力の両方を契約している家庭は230万軒に達した。
顧客層を拡大するうえで、ガスと電力を組み合わせたセット料金が大きく貢献している。ウェブサイトなどで新しい料金プランを案内して、既存顧客の契約延長と新規顧客の獲得を促進する(図1)。
そのために料金計算や顧客情報管理に必要なシステムを2012年に再構築した。現在では新しい料金プランを提供開始するまでに、3週間以内で社内の対応が完了するようになっている。さらに請求書もガスと電力の使用量を見やすく改良して、顧客ごとに利用できる割引プランの情報を加えた(図2)。
パソコンやスマートフォンを利用した情報サービスにも力を入れている。利用者がパソコンを使ってエネルギーの使用量を管理することで低料金プランへ移行できるほか、ポイント運営会社と連携してガスと電力の両方を利用するとポイントを提供するサービスを実施中だ(図3)。このほかに利用者が毎月の使用量をメーターから読み取って携帯電話などで申告するサービスがあり、利用した場合にはポイントが与えられる。
日本でも2016年4月に電力の小売全面自由化を実施するのに続いて、早ければ2017年4月にガスの小売全面自由化を実施する可能性が高まってきた。電力とガスの両方を自由化しないと、セット販売による料金の割引は認められない。ブリティッシュガスの例を見ても、電力とガスのセット販売が顧客獲得競争を加速させることは確実だ。
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