メガソーラーの収益を地域に還元、自治体と電力会社が手を結ぶエネルギー列島2014年版(34)広島(1/2 ページ)

広島県では自治体と中国電力が先頭に立って再生可能エネルギーの導入を推進している。官民共同で運営するメガソーラーの収益を地域に還元する方式で、現在7カ所に展開中だ。ダムや用水路を活用した小水力発電のほか、CO2を分離・回収できる最先端の石炭火力発電所の建設も始まる。

» 2014年12月09日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 固定価格買取制度によって全国各地で再生可能エネルギーの導入量が拡大した結果、利用者が負担する「賦課金」の増加が問題視されている。一方で原子力発電に巨額の税金が投入され続けていることを考えると、人体にも環境にも優しい再生可能エネルギーの負担が増えるほうが国益にかなう。

 とはいえ電気料金が相次いで値上がりする状況では、賦課金は可能な限り抑えたい。そこで広島県は中国電力グループと組んで「地域還元型再生可能エネルギー導入事業」を2013年に開始した。両者が共同で設立した組合を通じて、県有地や市有地にメガソーラーを建設して売電収入を得る計画だ(図1)。

図1 「地域還元型メガソーラー事業」の事業スキームと建設状況(上)、第1期で運転を開始した発電所(左から庄原、竹原、福富第1)。出典:中国電力、広島県環境県民局

 第1期と第2期に分けて合計7カ所に10.4MW(メガワット)のメガソーラーを稼働させる。すでに第1期の4カ所のうち3カ所で運転を開始した。2014年度は運転中の3カ所からの売電収入が約2億4000万円になり、1年間で3800万円の利益が出る見通しだ。

 広島県は利益の約77%を得る契約になっていて、第2期分まで含めると20年間で約13億円の収益を見込んでいる。その中には中国電力グループの利益から県に還元する分が含まれていて、20年間の累計で約2億円になる。メガソーラー事業全体の投資額は32億円で、広島県が8億円、中国電力グループが4億1000万円を出資したほか、地元の銀行が20億円を融資した。

 第2期の建設工事も進んでいて、いずれも2014年度中に運転を開始する予定だ。発電規模が2.1MWで最大の「大野太陽光発電所」は、廿日市市(はつかいちし)の市有地で2014年10月に運転を開始している(図2)。

図2 「大野太陽光発電所」の全景。出典:広島県環境県民局

 広島県の試算では、固定価格買取制度を通じて2012〜2014年度の3年間に設置予定の発電設備に対して、広島県民が負担する賦課金の総額は20年間で400億円に達する。7カ所のメガソーラーで得られる県の収益(約13億円)は400億円の3%強に相当する。さらに発電設備を拡大して地域に還元できる比率を高めていく必要がある。

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