太陽光に続いて小水力発電の取り組みも県内各地に広がってきた。広島県には数多くの河川が流れていて、これまでに約30カ所の小水力発電所が運転を開始している。新たに取り組む小水力発電所は農業用水路などを活用して、河川の流量に影響を与えない方式を採用する。
広島県が農業用水のために運営しているダムの1つに「三川(みかわ)ダム」がある(図3)。内陸部の世羅町(せらちょう)にあるダムで、下流へ放流する落差41メートルの水力を利用して発電する。500kWの発電能力で2015年4月に運転を開始する予定だ。年間の発電量は230万kWhを見込んでいて、640世帯分の電力を供給することができる。
中国電力も既存の水路を生かして小水力発電所の建設を進めている。広島県の北西部を流れる2つの河川を結ぶための分水路がある。この分水路の中で落差が大きい区間に発電用の水圧管路を敷設して、発電所まで水を流し込む構造だ(図4)。水流の落差は約27メートルで、発電能力は430kWになる。
取水口から発電所まで1キロ以上にわたる水圧管路には一般的な金属管ではなくて、地下に埋設しやすく耐圧性や耐震性に優れたポリエチレン管を採用する点が特徴だ。2016年3月に運転を開始する予定で、年間の発電量は220万kWを想定している。
石炭を使った火力発電でも最先端の取り組みが始まった。中国電力とJ-POWER(電源開発)が共同で「IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle、石炭ガス化複合発電)」の実証試験設備を建設中である。IGCCは現在の石炭火力では最高レベルの発電効率を得られる方式で、通常の石炭火力と比べて2割以上も燃料を削減することができる。
この実証試験設備は瀬戸内海の大崎上島(おおさきかみじま)にある中国電力の石炭火力発電所の構内で、2017年3月に運転を開始する予定だ(図5)。発電能力は16万6000kW(166MW)に達する。続く第2ステップでは石炭をガス化した際に発生するCO2を分離・回収する設備も2020年4月に稼働させる計画がある。石炭火力でもCO2を排出しない「クリーンコール技術」の先がけになる。
広島県の再生可能エネルギーは県と中国電力が推進する太陽光発電を中心に、このところバイオマス発電の導入量も伸びてきた(図6)。県内には木材加工メーカーが多く集まっていて、加工時に発生する大量の木くずなどを発電用の燃料に利用できる。今後は中国山地の森林で発生する間伐材などを使った発電設備も増える見込みだ。
*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −中国編−」をダウンロード
2016年版(34)広島:「遊園地がメガソーラーに、島にはCO2の少ない石炭火力発電所」
2015年版(34)広島:「瀬戸内海の島で太陽光発電、工場や家庭の廃棄物はバイオマスに」
2013年版(34)広島:「石炭火力発電が瀬戸内海の工業地帯で進化、バイオマスと太陽光も後押し」
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