電力会社が地域内の発電設備を時間単位で制御するためには、遠隔から出力を制御できるシステムが必要になる(図4)。新ルールでは太陽光発電設備に対して、遠隔出力制御システムの導入を義務づける方針だ。ただしシステムを構築するまでの猶予期間を認めて、その間はメールや電話などによる連絡方法も可能にする。
資源エネルギー庁によると、遠隔出力制御システムの導入費用は500kW以上の大規模な太陽光発電設備の場合で70万〜100万円になる。中小規模の10〜500kWの場合には5万〜10万円、家庭用の10kW未満では5000円程度の見込みだが、パワーコンディショナーの機能で対応できる場合もある。
第3の変更点は太陽光と風力に加えて、バイオマス発電にも出力制御の新ルールを導入する。現行のルールではバイオマス発電は火力発電と同じ位置づけで、他の再生可能エネルギーよりも先行して出力を制御することになっている。新ルールでは「地域型バイオマス発電」の規定を設けて、出力制御の優先順位を低くする。
地域型に含まれるのは木質バイオマスをはじめ、地域で発生する資源を燃料に利用する場合である(図5)。家畜の排せつ物や下水の汚泥からメタン発酵ガスを生成して発電するケースや、家庭の生ごみなどの廃棄物を燃料に利用して発電する設備も地域型になる。
従来と同様に出力を制御する「非地域型」には、海外から輸入する木材やパームヤシ殻(PKS)を燃料に使う場合のほか、化石燃料が中心になる混焼発電が含まれる。地域型の判断基準の1つは、地域に賦存する資源が燃料全体の8割以上で使われているかどうかである。
こうした出力制御の新ルールと合わせて、固定価格買取制度の認定ルールも改正する予定だ(図6)。発電した電力の買取価格(買い取る電気事業者から見ると調達価格)を決定するタイミングを従来の「接続申込時」から「接続契約時」に変更する。
ただし電力会社の理由によって接続申込から接続契約までに270日以上かかった場合には、271日目の時点で買取価格を確定することができる。認定ルールの改正は2015年4月1日以降に接続を申し込んだ発電設備から適用する。
ようやく接続保留の問題が解消する見通しになったことで、再生可能エネルギーの導入が再び始まる。電力会社は接続可能量を保守的に低く見積もっているため、実際に供給力が需要を上回って出力制御を実施するケースは当面のあいだ少ない。
接続可能量の算定にあたっては、再稼働のめどが立っていない古い原子力発電所の供給力まで対象に加えるなど、現実味に欠ける試算になっている。太陽光の供給力も最大値に近い状態で発揮できることを前提にしていて、そのような状況が各地で発生する可能性は極めて小さい。新ルールの運用を開始した後も、実際に適用するケースはさほど多くないと考えるのが妥当だろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.