原子力に依存する電力会社が収益の悪化に苦しむ中で、東京電力が驚異的な回復ぶりを見せている。2014年度は売上高が前年比3%の小幅な伸びにとどまるものの、営業利益は1.7倍の3230億円に拡大する。燃料費を中心に8370億円にのぼるコスト削減を実施した効果が表れる。
東京電力が2014年度の通期の業績見通しを公表した。売上高は前年比3.3%増の6兆8500億円で、営業利益は68.8%増の3200億円に拡大する見込みだ。2011年度と2012年度に営業赤字に陥った状態から一気にV字回復を果たす(図1)。一方で原子力に依存する割合の大きい関西電力や九州電力が赤字の状態から抜け出せずにいるのとは対照的である。
2014年度の売上高は前年度から約2200億円の増加を予想している。その要因を上半期(4〜9月)の実績で見てみると、大半は燃料費調整額によるものだ(図2)。むしろ販売量の減少(前年比3.7%減)によって、実質的な収益力は低下している。
それでも増収分を上回る3200億円の営業利益を出せる理由は、燃料費などを対象に実行したコスト(費用)の削減策にある。年間で8370億円にのぼるコストを削減できる見通しで、このうち恒常的な施策によって6684億円を削減する(図3)。
特に削減額が大きいのは火力発電所の稼働率向上による1113億円である。発電コストが石油よりも安いLNG(液化天然ガス)と石炭の比率を高めた結果である。今後さらに高効率の火力発電の供給量が増えて燃料費の削減が進んでいく。合わせて燃料の調達単価を引き下げた効果も大きい。
その一方で火力発電設備の修繕工事を延期するなど、2015年度以降に繰り延べたことによるコスト削減が1686億円もある。2015年度からは繰り延べ分のコストが発生するほか、販売量の減少が続いて売上高は伸びない状況にある。2016年度には小売の全面自由化も始まって競争が激しくなる。
東京電力が今後も黒字の状態を維持していくためには、抜本的な売上拡大策とコスト削減策が求められる。新たに「生産性倍増に向けた10のチャレンジ」を設定して、発電・送配電・小売を担当する各カンパニーが短期から長期までの施策を実行する計画だ(図4)。その中には2015年度から中部電力と共同で推進する火力発電の「包括的アライアンス」などが含まれている。
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