東京電力が4000億円以上も利益を改善、料金の値上げと石炭火力の増加で電力供給サービス

国の管理下にある東京電力が2013年度の決算で一気に黒字に転じた。売上高が前年から6500億円、利益は4000億円以上も増加した。電気料金を値上げした効果に加えて、火力発電の燃料を石油から石炭へシフトしたことが業績回復の要因だ。原子力を再稼働させる理由は見あたらない。

» 2014年05月07日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 2013年度の決算で電力会社の多くが業績を回復させた中でも、東京電力の改善ぶりはひときわ目を引く。売上高が前年から1割以上も伸びて、営業利益は1913億円の黒字になった(図1)。本業の収益力を示す営業利益が4000億円以上も改善したことで、来期以降の経営に明るい兆しが見えている。

図1 東京電力の2013年度(2014年3月期)の業績と前年比較。出典:東京電力

 過去5年間で最も営業利益が出たのは期末に震災が発生した2010年度だが、その時の水準と比べても2013年度は半分程度にまで回復した(図2)。一方で売上高は2012年9月に実施した電気料金の値上げによって、2012年度と2013年度に2年連続で6000億円以上も増加している。震災前の2010年度をはるかに上回る伸び率である。電力会社が簡単に売上高を増やせることを示している。

図2 東京電力の過去5年間の業績。出典:東京電力

 2013年度に売上高が大幅に伸びた要因は2つある。1つは電気料金の値上げによるものだが、もう1つは燃料費の増加に応じて利用者から徴収する「燃料費調整制度」による収入が前年から2860億円も増えている(図3)。これに対して燃料費そのものの増加額は1267億円にとどまった。火力発電の比率は増えたものの、燃料費の高い石油から安い石炭へシフトしたことで2000億円も削減できたことが大きい。

図3  2013年度の収支変動要因(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力

 実際に火力発電で使用した燃料の消費量を見ると、2012年度まで増え続けた石油が2013年度には3分の2程度に減った(図4)。代わって石炭の消費量が2.5倍以上の規模に拡大している。LNG(液化天然ガス)は横ばいの状態で、ほとんど増えていない。

図4 年度別の燃料消費量の推移。出典:東京電力

 東京電力が2013〜2015年度の3年間に調達する燃料費の単価を比較すると、電力1kWhあたり石油が16.78円であるのに対して、ガスは10.80円、さらに石炭は4.01円と4分の1以下の安さである。2014年度以降も石油を減らしてガスと石炭を増やしていけば、燃料費をもっと下げることができる。電力会社は原子力に依存しなくても業績を回復させる方法があることを、東京電力の2013年度決算が示している。

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