ラッシュ時にも電圧を維持、年間21万kWhを節電蓄電・発電機器(1/2 ページ)

東武鉄道は2014年12月22日、電車が減速する際のエネルギーを電力に変えて蓄える「回生電力貯蔵装置」の運用を開始した。変電所間の距離が長い東武野田線の運河駅に装置を導入することで、年間21万kWhの電力量を削減できる。

» 2014年12月25日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 東武鉄道は2014年12月22日、電車が減速する際のエネルギーを電力に変えて蓄える「回生電力貯蔵装置」の運用を開始した。

 回生ブレーキを備えた電車とセットになって機能する(図1)。回生ブレーキとは、減速時に電車の運動エネルギーの一部を電力に変えて、架線に送り出す機能を持った装置。回生電力貯蔵装置は、回生電力を蓄えるリチウムイオン蓄電池を内部に備えており、蓄えた電力を加速する別の電車に供給できる。

図1 回生電力貯蔵装置(TESS)の働き 出典:東芝

電圧が低下しやすい区間に導入

 装置を据え付けたのは、大宮駅(さいたま市)と船橋駅(千葉県船橋市)を結ぶ、東武野田線(東武アーバンパークライン)の運河駅(千葉県流山市東深井、図2)。

 「野田変電所と豊四季(とよしき)変電所の間は、11.65kmと長く、電車の運行本数も多い。このためラッシュ時には(電力消費量が多く)架線電圧が降下(低下)しやすかった。そこで両変電所に挟まれた運河駅に装置を設置した。両変電所が供給する電力量を年間21万kWh削減することができる」(東武鉄道)。

図2 東武アーバンパークラインの路線図 出典:東武鉄道

 「当社が2013年度から東武アーバンパークラインに導入を進めている60000系車両(図3)は、従来の8000系とは異なり、回生ブレーキを備えている。そのため、減速時に架線に電力を送ることができ*1)、同一変電所間に加速する電車がある場合は、その電車が回生電力を吸収する。今回の装置を導入したことで、加速中の電車がないときに、回生電力を蓄えることが可能になった」(同社)。

*1) 2014年度末には60000系の他、既に導入が進んでいる10000系を合わせて、同線を運行する車両の過半数が回生車両になるとした。60000系は8000系と比較して、省エネルギー化を進めており、消費電力を約40%削減できる。なお、減速中の60000系車両は、内部の照明や空調設備に回生電力を利用していない。

図3 東武鉄道の省エネ車両「60000系」(左)と「10000系」 出典:東武鉄道
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