高速増殖型の藻からバイオ燃料、量産に向けた培養試験が始まる自然エネルギー

藻とCO2と太陽光を組み合わせて、光合成でバイオ燃料を作る試みが進んできた。IHIを中心にしたプロジェクトチームが鹿児島県に大規模な培養試験設備を建設して4月から運用を開始する予定だ。油分を大量に含む藻を量産してバイオ燃料の実用化を目指す。

» 2015年02月09日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 培養試験設備の建設地。出典:IHIほか

 次世代のバイオ燃料の1つに、藻(も)を利用する方法がある。藻の中には大量の油分を含む性質のものがあって、量産できれば自動車などの燃料に使うことができる。

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業」の一環で、大規模な培養試験設備を鹿児島県に建設中だ(図1)。

 設備の中核になるのは、広さ1500平方メートルの培養池である(図2)。屋外の培養試験設備としては国内最大級の規模で、バイオ燃料になる藻を大量に培養できる技術を確立する計画だ。3月中に設備が完成して、4月以降に試験運用を開始する。

図2 建設中の培養試験設備。出典:IHIほか

 プロジェクトにはIHIのほか、藻の研究に取り組む神戸大学とネオ・モルガン研究所が参画する。この合同チームは2013年に、IHIの横浜事業所の中に設置した培養試験プラントを使って藻の安定培養に成功している(図3)。当時のプラントの広さは100平方メートルだったが、今回は15倍の規模の設備で量産技術の確立を目指す。

図3 2013年度に実施した屋外安定培養の状況。出典:IHIほか

 バイオ燃料に転換できる藻は、神戸大学の榎本平教授が発見した「榎本藻(えのもとも)」である。油分を多く含む藻で、乾燥すると約50%が燃料になる。同種の藻と比べて1000倍のスピードで増殖する性質があり、太陽光とCO2による光合成で1個の藻から約4000個の藻を1カ月間に作り出すことができる。

 従来のバイオ燃料はサトウキビやトウモロコシなどから作る場合が多く、食料の生産活動を阻害する問題点が指摘されている。これに対して藻から作るバイオ燃料は屋外の培養設備でCO2を使って量産することができる。食料の生産に影響を与えず、温暖化対策にも生かせることから、次世代のバイオ燃料として期待がかかる。

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