九州電力は要対策、太陽光発電の出力抑制の試算が示す法制度・規制(1/4 ページ)

太陽光発電協会(JPEA)は2015年3月、太陽光発電設備に対する出力抑制の影響を公表した。九州電力と東北電力、中国電力を対象としたもの。無制限・無補償の出力制御とはいうものの、九州電力では2017年ごろの年間抑制率は6.9%にとどまるという。ただし、対策を打たないと2021年には23.4%に達する可能性がある。JPEAの試算から分かることは、原子力発電所の運用と地域間系統連系線の活用が年間抑制率に強い影響を与えることだ。

» 2015年03月11日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 太陽光発電協会(JPEA)は2015年3月5日、「出力制御シミュレーション」の結果を発表した。新たに運用が始まる電力会社による出力制御の影響を独自に試算したものだ。対象は九州電力、東北電力、中国電力である*1)。試算によれば、九州電力の場合、系統接続量が同社のいう「接続可能量」である817万kWに達した段階でも、年間抑制率は6.9%にとどまるという。

 固定価格買取制度(FIT)を利用した太陽光発電の設備認定量が急増した結果、2014年秋、九州電力など5つの電力会社が系統接続申し込みの回答を保留し始めた。経済産業省は2014年1月の省令改正によって事態に対応。東京電力、中部電力、関西電力を除く電力7社を指定電気事業者とし、従来の30日という上限枠を超える無制限、無補償の出力制限を認め、この条件に従って接続を受け入れることになった。「360時間ルール」「指定ルール」と呼ぶ*2)

 指定ルールなどによって電力会社の主張する危機は抑えられる。ところが太陽光発電設備の設置を検討している事業者や融資に当たる金融機関にとっては、どの程度の売電が実際に可能なのか分かりにくくなる。事業収益の予見性が失われる形だ。そこでJPEAが指定ルールの適用によってどの程度のリスクが生まれるのかを試算した形だ。

*1) JPEAは今後、北海道電力、北陸電力、四国電力、沖縄電力のシミュレーションを試算し、公表する予定だ。
*2) 従来は、出力500kW以上の大規模な設備に限り、年間30日まで出力を制御する「30日ルール」が認められていた。今後は接続可能量を超過するまで、500kW未満の発電設備に対し、新たに年間360時間まで出力を制御できる。これを「360時間ルール」という(関連記事)。指定ルールでは360時間を超えた出力制御を認めている。

九州電力では2017年に年間抑制率6.9%

 九州電力を対象としたシミュレーション結果の一部を図1に示す。

 縦軸の年間抑制率とは、1年間でどの程度の出力抑制を求められるかという数値だ。出力制御がない場合を100%として、抑制される年間電力量の割合を意味する。分かりやすくするために10%を赤で示した。

 横軸は系統接続量。左端の403万kWは、2014年11月現在の太陽光発電の値だ。中央の817万kWは九州電力が主張する「接続可能量」*3)。冒頭で挙げた年間抑制率6.9%とはこの時点ものだ。JPEAは817万kWに到達する時期を2017年ごろと予測している。右端の1300万kWに達する時期はJPEAの予測によれば2021年ごろだ。

*3) 経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の新エネルギー小委員会で配布された資料による(2014年12月16日に開催された第3回系統ワーキンググループ)。

図1 ベースロード等電源容量が477万kWの場合の九州電力のシミュレーション結果 出典:JPEA

 青いグラフは500kW以上の設備に対して30日ルールが適用されたときの結果だ。従来の出力制御である。緑色は10kW以上の設備に対して指定ルールを適用したときのもの。系統接続量が1000万kWに達するまではどちらの結果も同じだが、それを超えると差が開いてくる。桃色は10kW未満の設備に対して指定ルールが適用されたときのもの。住宅の余剰電力買取にはほとんど影響が出ないという結果になった。

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