島のエネルギーをCO2フリーに、石油から太陽光・風力・バイオマスへエネルギー列島2014年版(47)沖縄(1/2 ページ)

沖縄県では島ごとに石油火力発電に依存する体制が続いてきたが、豊かな自然環境にふさわしい再生可能エネルギーを拡大する動きが活発になっている。人口の少ない本島の北部や離島でもメガソーラーが稼働して地域の電力源を担う。台風に強い可倒式の風力発電も沖縄ならではの取り組みだ。

» 2015年03月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 沖縄県の人口は那覇市を中心に、本島の中部から南部に8割以上が集中する構造だ。電力の供給ネットワークも同様で、発電設備や送配電設備は本島の南側に数多く集まっている。北部や離島では小規模な火力発電所に加えて再生可能エネルギーの果たす役割が大きく、新しい発電設備も続々と動き始めている。

 本島北部の中心にある名護市では、広大な牧場の跡地を利用したメガソーラーが2015年2月に運転を開始した。15万平方メートルの用地に3万2000枚の太陽光パネルを設置して、発電能力は8.4MW(メガワット)に達する(図1)。現在のところ沖縄県内では最大のメガソーラーである。

図1 「いちご名護二見ECO発電所」の全景。出典:いちごECOエナジー

 年間の発電量は990万kWhを見込んでいて、一般家庭で2750世帯分の使用量に匹敵する。名護市の総世帯数(約2万7700世帯)の1割をカバーすることができる。沖縄本島の北部では沖縄電力の火力発電所が1カ所のほかに、J-Power(電源開発)の海水を利用した揚水発電所があるだけで、それ以外は太陽光と風力が地域の電力源になっている。

 名護市の北側にある大宜味村(おおぎみそん)には、風力発電と蓄電池を組み合わせた実証研究設備が2014年3月から稼働を開始した。1基で2MWの発電能力がある大型風車2基を設置して、天候による出力の変動を大型の蓄電池で吸収する試みだ(図2)。

図2 「大宜味風力発電実証研究設備」の所在地と全景。出典:沖縄電力

 蓄電池の容量は4500kWhあって、一般家庭が1日に必要とする電力量(10kWh)に換算して450世帯分の電力を充電することができる。風力発電では年間に800万kWhを供給できる見込みだ。2200世帯分の使用量に相当する規模で、大宜味村の総世帯数(約1700世帯)を上回る。蓄電池を組み合わせて地域の電力を安定に保つことができれば、他の地域にも太陽光や風力発電を展開する有効な手段になる。

 沖縄本島から300キロメートル離れた宮古島でも、同様の実証研究を2010年から進めてきた。島内には小規模な火力発電所が3カ所と中型の風力発電機5基が稼働している。さらに発電能力が4MWのメガソーラーと2種類の蓄電池を追加して電力の安定化を図る(図3)。

図3 宮古島の発電設備(上)とメガソーラー実証研究設備(下)。出典:沖縄電力

 蓄電池のうち容量の大きいNAS(ナトリウム硫黄)電池はメガソーラーと同じ4MWの出力が可能で、太陽光発電のピーク時の電力をフルに充電できるだけの能力がある。もう1つのリチウムイオン電池は容量が小さい代わりに充電・放電のスピードが速く、太陽光や風力で生じる小刻みの出力変動を調整することができる。

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