風力発電で全国トップを走り、バイオマスと水素でも電力を作るエネルギー列島2015年版(5)秋田(2/2 ページ)

» 2015年05月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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陸上でも11カ所で風力発電計画が進む

 洋上で風力発電の開発が進み、陸上では運転を開始する風力発電所が相次いでいる。2015年に入ってからだけでも、秋田県内の4カ所で合計23基の風力発電設備が稼働した。2月に運転を開始した「ユーラス秋田港ウインドファーム」は6基の大型風車で18MWの電力を供給する(図4)。風車を設置した場所は洋上風力の対象になっている秋田港の一角だ。

図4 「ユーラス秋田港ウインドファーム」の運転風景。出典:ユーラスエナジーホールディングス

 ほかの3カ所の新しい風力発電所も、いずれも日本海沿岸部に集まっている。さらに現時点で秋田県内では11カ所の風力発電所が環境影響評価の手続きを進めていて、合計すると170基の風車で440MWの発電規模になる。

 秋田県の風力発電は陸上と洋上で長期にわたって拡大していく。すでに固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模では2013年から全国の1位を続けている(図5)。認定を受けた風力発電設備がすべて運転を開始すると、秋田県の全世帯が使用する電力の5割を供給することが可能になる。

図5 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 風力に続いてバイオマスの導入プロジェクトも活発になってきた。木質バイオマスでは東北地方でも最大級の発電所を秋田市内に建設する計画が進んでいる(図6)。建設用地はユーラス秋田港ウインドファームが立地する同じ地区にある。

図6 秋田市に建設する木質バイオマス発電所の完成イメージ(上)と事業スキーム(下)。出典:くにうみアセットマネジメント

 燃料には秋田県が全国一の資源量を誇るスギなどの未利用木材を使う。特に県南部の豪雪地帯で大量に発生する曲がり材を燃料として消費することで、林業の活性化と森林の保全に生かす方針だ。

 発電能力は20MWで、年間の発電量は1億4000万kWh程度を想定している。一般家庭で3万8000世帯分の使用量に相当する電力を供給できる見込みだ。運転開始は2016年7月を予定している。総事業費が125億円の大規模なプロジェクトで、再生可能エネルギーの発電事業者や地元の金融機関が資金を提供するほか、秋田県も「ふるさと融資」で31億円を拠出して支援する。

 こうして再生可能エネルギーの導入量が増えていくと、懸念されるのは電力が供給過剰になることだ。太陽光と風力発電が急増している東北地方では、早くも東北電力の送配電能力を超える規模になりつつある。地域の供給量が需要を上回る場合には、発電設備の出力を抑制する措置がとられる。

 その対策として注目を集めるのが水素の製造だ。秋田県は水素関連の技術開発で先行する千代田化工建設と協定を結んで、風力発電をはじめとする再生可能エネルギーから水素を製造するプロジェクトを推進していく。風力発電の電力を使って水を電気分解して水素を製造したうえで、液化して全国各地へ輸送・貯蔵できるようにする(図7)。2020年をめどに実証運転を開始する計画だ。

図7 風力発電所で電力から水素を製造するフィールド実証のイメージ。出典:千代田化工建設

 想定では秋田県の風力発電で余る年間270億kWhの電力を使って、54億立方メートルの水素を製造することができる。水素で走る燃料電池車は1台あたり年間に1000立方メートル程度(1万キロメートル走行時)を消費することから、実に540万台分の水素を風力発電の余剰電力で供給できる計算になる。2020年代には秋田県が水素供給基地として発展する可能性が大いにある。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −北海道・東北 Part2−」をダウンロード

2016年版(5)秋田:「日本海に洋上風力発電が広がる未来、地熱とバイオマスでも電力を増やす」

2014年版(5)秋田:「日本海沿岸に100基を超える風力発電、買取制度では全国トップ」

2013年版(5)秋田:「巨大な干拓地で風力から太陽光まで、潜在するバイオマスと地熱も豊富」

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