同研究チームが発見した新たな触媒は、タンタル(Ta)と白金(Pt)で作るTaPt3合金ナノ粒子で、常温・常圧でエタノール分子の炭素ー炭素結合を切断して電力を取り出すことに成功した(図2)。
タンタル金属は微粒子の状態では、大気中の酸素や水分と激しく反応する性質を持つ。しかし、水分・酸素濃度が0.1ppm以下の不活性ガス雰囲気下で合成を行うことで白金と化学結合を形成し安定化。大気中や水中でも酸化および水酸化しない状態を作り上げられたという。
このTaPt3ナノ粒子を触媒として使用し、常温常圧の水溶液中にあるエタノール燃料の酸化実験を行い、高いエタノール酸化電流密度を実現した(図3)。
さらに、TaPt3ナノ粒子を組み込んだPEMFCは、従来触媒のPEMFCよりも高い出力密度を実現したという(図4)。
このエタノールの酸化反応を表面敏感赤外分光法によって測定した結果、TaPt3ナノ粒子を触媒とした場合、炭素ー炭素結合を切断し、CO2にまで、完全に酸化する能力があることが明らかとなった(図5)。
図5:表面敏感赤外分光法による触媒表面のCO振動(左図)とCO2振動(右図)の測定結果。赤円内部のピークがCOおよびCO2の発生した点。(a)と(c)がTaPt3ナノ粒子の結果 ※出典:物質・材料研究機構同触媒を使えばエタノールPEMFCから効率的に電力を取り出すことが可能となり、バイオマス燃料技術と組み合わせることで、新たな発電・蓄電システムの姿を実現できる可能性が生まれてくる。今後に向けてはまず、TaPt3ナノ粒子の合成収量向上に取り組む計画だ。現時点の合成収量は数10ミリグラムだが、これをPEMFC1スタックに必要な数グラムレベルに引き上げる方針だとしている。
お米を食べて「稲わら」は液体燃料へ、1リットル70円
空気と水で作るディーゼル燃料で自動車が走る、アウディが運用を開始
熱エネルギーを永続保存できる蓄熱素材を発見、損失ゼロの太陽熱発電実現に期待Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10