節電効果が高いガス空調、低負荷時の運転効率を上げてもっと省エネ蓄電・発電機器

省電力性能に優れた空調システムとして注目されるガスエンジンヒートポンプ(GHP)。東京ガスなどの大手都市ガス3社はアイシン精機、パナソニック、ヤンマーエネルギーシステムと共同で新型GHPを開発した。技術改良によって従来機より年間運転効率を平均約25%向上させた。

» 2015年05月29日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手都市ガス3社は、高効率ガスエンジンヒートポンプ「GHP XAIR(エグゼア)」の次世代機として、さらに年間運転効率を向上した「GHP XAIR II」を開発した。アイシン精機、パナソニック、ヤンマーエネルギーシステムと共同開発したもので、2015年10月から順次販売を開始する(図1)。

図1 「GHP XAIRII」シリーズ 出典:東京ガス

 ガスエンジンヒートポンプ(GHP)はガスエンジンでコンプレッサーを回転させ、ヒートポンプ運転で冷暖房を行う空調システム。GHP XAIR IIは年間の運転時間の約75%を、定格能力に対する負荷率が50%以下の低負荷状態で運転できるという。低負荷状態での運転効率を高めるためにはエンジンの作動・停止によるエネルギーロスを減らすことが重要となる。そこで新機種はエンジンの回転数範囲を拡大して、最低回転数の低回転数化を図ることなどで最低出力を平均15%低減。低負荷時の連続運転を可能にしてエンジンの発停ロスを抑えている。

 低回転数化するにはエンジン振動が他の構造部品に与える影響の増大や、回転ムラによるエンストの発生、圧縮機の回転数が下がることによる圧縮機効率の低下といった課題を解決する必要がある。そこで振動特性の解析による振動の抑制や、エンジンの動力を圧縮機に伝えるエンジンプーリーに外周にベルトを掛けて外径を拡大させ、エンジン回転数に対する圧縮機回転数比を最適化するなどの対策を施している。こうした改善でエンジンの発停ロス低減を実現した結果、低負荷運転時の効率が平均約40%向上したという。

 冷媒を空気で冷却するための熱交換機のチューブの列数を、従来の2列から3列に増加させたことや、熱交換器の形状を変更したことなどにより伝熱面積を拡大し、熱交換性能も高めている。室外機ファンのプロペラ径を大口径化したことや、シュラウド(プロペラの流路ガイド)形状を最適化したことなどにより、室外機ファンの送風効率も向上させている。

 こうした技術改良により、同じ冷房能力を持つ従来機と比較した場合、年間運転効率を平均で約25%高め、1次エネルギー消費量を年間約20%削減している。ガス3社では今後、オフィスビル、商業施設、学校、病院、工場などに向けて幅広く提案・販売する方針だ。

 2014年4月に施行された「改正省エネ法」では、需要家側の電力ピーク対策として、省エネに加えて「節電」努力が義務化された。経済産業省から訓示された「節電の指針」にはガス冷暖房の活用が明確に位置付けられており、今後さらなる省エネに向けて高効率なGHPの普及拡大が期待されている。

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