石炭火力は燃料費が安い半面、CO2を含めて排ガスが大きな問題になる。その点ではガス化してから発電するIGCCは排ガス中の有害物質が少なくて済み、CO2を分離・回収しやすい利点がある。
石炭からガスを生成するには、石炭を細かく砕いた微粉炭の状態にして、圧縮した空気とともにガス化炉の中で燃焼させる(図5)。燃焼によって発生した高温のガスを冷却したうえで、不純物を取り除いて精製してから、ガスタービンに送り込んで発電する仕組みだ。同時にガスを冷却した排熱を利用して蒸気を発生させて、蒸気タービンでも発電することができる。これで2段階のコンバインドサイクルになる。
2020年になると燃焼温度が1700度のIGCCの実用化も始まる予定で、発電効率は50%に達する。第1世代の石炭火力の主流であるUSCの40%と比べて1.25倍になり、CO2排出量は2割も少なくなる見込みだ。いまや世界各国で石炭火力を縮小する動きが進んでいる。IGCCでCO2排出量を削減して、さらにCO2を分離・回収する技術が進化すれば、石炭火力の欠点は大幅に改善する。
国内では東京電力と東北電力が共同で運営する福島県の「勿来(なこそ)発電所」で、IGCCの最初の商用機が2013年に稼働した(図6)。燃焼温度は1200度と低いが、発電効率は42%になる。このほかに中国電力とJ-POWER(電源開発)が広島県で建設中の「大崎クールジェン」が2016年度から実証運転を開始する計画だ。大崎クールジェンではIGCCを稼働させた後に、CO2を分離・回収する技術の実証にも取り組む。
2030年代になれば、CO2を回収しながら発電設備の中でリサイクルできる技術も期待できる。「クローズドIGCC」と呼ぶ技術で、回収したCO2をガス化やガスの燃焼時に再利用する仕組みだ(図7)。CO2を循環させて排出量をゼロに抑える。CO2を回収したうえで42%程度の発電効率を発揮することができる。
もう1つIGCCの進化形に「水蒸気噴流床ガス化技術」がある。噴流床方式は微粉炭をバーナーでガス化炉の中に噴射して、高温で短時間にガスを生成する。この時に水蒸気を加えることによって、ガスの中の酸素を減らして発電効率を高める技術だ(図8)。政府のロードマップでは2030年に発電効率が57%程度まで向上する。IGCCの中では最高の効率になる。
水蒸気噴流床ガス化技術を実用化できると、燃焼温度が1700度のIGCCと比べてもCO2排出量は1割以上も少なくなる見込みだ。課題は発電にかかるコストを低減することで、2030年代に実用化する商用機では第1世代のUSCと同等以下のコストを目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.