CO2でバイオ燃料やプラスチック、太陽光のエネルギーが新たな価値を生む火力発電の最新技術を学ぶ(6)(1/2 ページ)

火力発電で回収したCO2の処理方法は2通りある。1つは地下に貯留して大気中に排出させない。もう1つはCO2から価値のある商品を作り出すことだ。CO2と太陽光で光合成を促進して、バイオ燃料やプラスチックの原料を製造する技術が進化してきた。2020年代の後半には実用化が期待できる。

» 2015年08月17日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 CO2を回収する技術が火力発電所に適用できると、最大で90%以上を大気中に放出しないで済むようになる。回収したCO2は地中に貯留するか、別の用途に転換する必要がある(図1)。CO2を排出しないクリーンなエコシステムが「CO2回収・利用・貯留(Carbon oxide Capture, Utilization, Storage)」のプロセスで実現する。

図1 「CO2回収・利用・貯留(CCUS)」の全体像と主な取り組み(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 CO2貯留(CCS)の取り組みは海外のほうが進んでいるが。日本でも北海道の苫小牧で大規模な実証試験が始まっている。年間に10万トン以上のCO2を海底1000メートルよりも深い貯留層までパイプラインで送り込んで、環境に対する影響などを評価する予定だ。大量のCO2を処分する方法としては、現在のところ最も有効と考えられている(図2)。

図2 CO2利用(CCU)とCO2貯留(CCS)の方向性。出典:資源エネルギー庁

 ただしCCSの問題はコストが非常に高くつくことである。既存のガス田や油田を利用する方法を除いて現時点では経済性が見合わない。一方のCO2利用(CCU)に関しては新しい技術の開発が急速に進んできた。CO2の処理量はCCSと比べると少ないものの、価値のある商品を製造できることからコスト面では有利だ。

 主要なCO2利用技術は2種類に分類することができる(図3)。1つは水中に生息する微細な藻類を増殖させる方法がある。水中にCO2を入れて、太陽光による光合成を促進する。増殖した藻からバイオ燃料を製造することができる。もう1つの方法は光合成と同じプロセスを人工的に作り出して、太陽光のエネルギーとCO2からプラスチックなどの原料を生産する技術である。

図3  主なCO2利用技術(画像をクリックすると拡大して関連情報を表示)。出典:資源エネルギー庁
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