食品廃棄物からバイオガスで発電、500世帯分の電力と温水・燃料を作る自然エネルギー

大阪府で初めて固定価格買取制度の適用を受けたバイオガス発電プラントが運転を開始した。食品工場から大量に発生する廃棄物を1日あたり17トンも処理して、250kWの電力のほかに温水と燃料を作ることができる。発電プラントにはドイツ製のシステムを採用した。

» 2015年08月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 バイオガス発電プラントは大阪府の南部にある岸和田市の臨海工業地帯で8月18日に稼働した。廃棄物のリサイクルと再生可能エネルギー事業を手がけるリマテックが運営する。1000平方メートルの敷地にバイオガス発電機のほか、廃棄物の受入タンクやメタン発酵槽を備えている(図1)。

図1 バイオガス発電プラントの全景。右はメタン発酵槽、左は廃棄物受入タンク。出典:リマテック

 発電能力は250kW(キロワット)である。1日に24時間運転で年間に300日の稼働を想定した場合、発電量は180万kWh(キロワット時)になる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して500世帯分に相当する。

 発電した電力は固定価格買取制度を通じて全量を関西電力に売電する方針だ。メタン発酵バイオガスによる電力の買取価格(1kWhあたり39円、税抜き)を適用できるため、年間の売電収入は7000万円以上を見込める。

 発電機はコージェネレーション方式(CHP:Combined Heat & Power、熱電併給)を導入した(図2)。発電で生じる排熱を使って85度の温水を供給することができる。温水はバイオガスを精製するためのメタン発酵槽の熱源に利用する。メタン発酵を含むバイオガス発電のシステムはドイツの専門メーカーであるEnviTec Biogas社のノウハウを導入した。

図2 バイオガス発電プラント全体の設備構成。出典:リマテック

 バイオガスの元になる廃棄物は近隣の食品工場などから発生する大量の生ごみが主体である。1日あたり17トンにのぼる有機性の廃棄物のうち液状のものをタンクローリーで搬入して、水と微生物を加えて発酵させる仕組みだ。精製したバイオガスを発電用の燃料に利用する一方、発酵後に残る消化液も近隣の工場でセメント焼成用の補助燃料(RF:Reclaiming Fuel、廃棄物を利用した再生燃料)の原料として活用する(図3)。

図3 廃棄物からバイオガスを精製(上段)、発電・売電する(下段)までのプロセス。出典:リマテック

 プラントを運営するリマテックは2014年にバイオガス発電専門の子会社「リナジェン」を設立して、岸和田市のプラントを設計・施工した。今後はリナジェンを通じて、食品工場などを対象にバイオガス発電プラントを展開していく計画だ。

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