静岡県の再生可能エネルギーは世界文化遺産の富士山と共存することが重要だ。景観を損ねる発電設備の建設を排除する自治体も出てきた。その一方では環境にやさしいエネルギーとして風力や地熱を観光や教育に利用する町がある。太陽光や水力を含めて豊富な資源の活用法を模索する試みは続く。
観光の名所として知られる静岡県の伊豆半島の山中に、大型の風車11基を並べた風力発電所が8月に運転を開始した。東京電力が2005年から10年間を費やして開発してきた「東伊豆風力発電所」である(図1)。地元の住民から自然破壊につながるとして反対の声も上がったが、自治体の同意を得て工事を進め、当初の予定から4年の遅れで稼働にこぎつけた。
その3カ月前には、東京電力が出資するユーラスエナジーグループの風力発電所も隣接する場所で運転を開始している。両方を合わせて21基の大型風車が山の尾根に並び、発電能力が35MW(メガワット)に達する風力発電の拠点に変わった。年間の発電量は一般家庭の使用量(年間3600kWh=キロワット時)に換算して2万世帯分にのぼる見込みだ。
2つの風力発電所が立地する東伊豆町(総世帯数6200世帯)と河津町(3300世帯)を足して2倍以上の家庭の電力需要をまかなえる規模になる。地域の振興と自然環境の保全を両立させる難しさを抱えながら、伊豆半島の再生可能エネルギーは拡大を続けている(図2)。
中でも東伊豆町は積極的に再生可能エネルギーの導入を進めてきた。12年前の2003年に町営の「東伊豆町風力発電所」を稼働させている(図3)。1基あたり0.6MWの風車3基で構成する。最新の風力発電所と比べると規模は小さいが、太平洋から吹く風を受けて年間に350万kWhの電力を供給することができる。この発電所だけでほぼ1000世帯分の電力になる。
風力に続いて地熱と水力を利用した発電所も2014年に運転を開始した(図4)。東伊豆町が「エコリゾートタウン東伊豆」を推進する一環で整備したものだ。発電能力は地熱による温泉発電が3kWで、町内の公園に設置した小水力発電は0.7kWに過ぎないが、地域の自然を生かしたエネルギーの地産地消を通じて地球環境保護に取り組む町の姿勢をアピールする狙いがある。
すでに町内の発電所をめぐるツアーを企画して観光メニューに組み込んだほか、子供たちを集めて環境教育の場として利用している。年間に1000人以上の参加者を対象に、発電方式の違いによるメリットとデメリットを説明しながら、地球温暖化やエネルギーの問題について考える機会を提供する。
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