3段構えで災害に備える、トヨタの描く“グリッド構想”が実現スマートシティ(1/2 ページ)

トヨタ自動車はグループ会社や東北電力などと共同で、宮城県の工業団地でスマートコミュニティ事業「F-グリッド構想」を進めている。2015年10月22日には非常時地域送電システムの運用が始まった。

» 2015年10月26日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 トヨタ自動車(以下、トヨタ)は東日本大震災が起きた2011年の秋から、トヨタ自動車東日本の工場がある宮城県大衡村(おおひらむら)の工業団地で、スマートコミュニティ事業「F-グリッド構想」を進めている。同事業において2015年10月22日から非常時地域送電システムの運用が始まった。

 F-グリッド構想の大まかな目的は2つある(図1)。1つ目が工業団地で都市ガスを利用するガスコージェネレーションシステムなどの自家発電設備で作った電力や熱を、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を利用してグリッド内の複数の工場に最適供給することだ。同時に電力会社より購入した電力の制御・最適化も図りながら運用していく。

 これが同事業の中核となっており、既に2013年4月から運用が始まっている。F-グリッド構想導入前の2011年度と比較して、約20%の省エネルギー化と約23%のCO2削減を実現するなど、各工場におけるエネルギー調達コストの低減に寄与しているという。

図1 「F-グリッド構想」の概要(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 そして2つ目が今回運用を開始した非常時地域送電システムだ。これは長期停電などの非常時に、自家発電設備の余剰電力を東北電力が購入し、東北電力の配電線を通して大衡村役場など地域の防災拠点に電力供給を行うシステムとなる。

 自家発電設備には出力7800kW(キロワット)の大型のガスコージェネレーションシステムと、同650kWの太陽光発電システムを利用する。さらに緊急電源として外部給電機能を有するトヨタのプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」を8台、ハイブリッド車用のリユース蓄電池と太陽光発電で構成する充放電システムを2地点に配備している。

 これらの自家発電設備は、トヨタと、トヨタ自動車東日本、豊田通商、東北電力など、現時点で11法人から成るF-グリッド構想の運営組織である「F-グリッド宮城・大衡有限責任事業組合(LLP)」が保有する(図2)。

図2 「F-グリッド宮城・大衡有限責任事業組合(LLP)」の会員企業 出典:トヨタ自動車
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