F-グリッド構想において、非常時を想定したエネルギーのバックアップ体制は3段階で構築されている(図3)。例えば大地震の直後、自家発電設備が停止し、さらに電力会社からの電力供給も遮断されている状況を想定する。
この場合、まず各拠点に設置してあるプリウスPHVやリユース蓄電池を利用した充放電システムを使い、自家発電設備の起動を待たずに電源確保する。これが第1段階だ。配備している8台のプリウスPHVは、1台当たり単相100V(ボルト)-1500W(ワット)の電力を供給できる(図4)。充放電システムはトヨタ自動車東日本に100V-30kW、トヨタ紡織東北に100V-20kWの電力供給が可能なシステムを設置している。
次に第2段階として自家発電設備への影響および健全性の確認、事前準備などを経て発電設備を起動(ブラックアウトスタート)させる。そしてF-グリッド内の各工場に、災害復旧などに必要な電力を供給する。そして第3段階に相当するのが、先述した非常時地域送電システムの運用だ。自家発電設備の稼働による余剰電力を最大1500kWまで東北電力がLLPから買い取り、地域の防災拠点へ供給する。F-グリッドから周辺地域へ電力を供給するシステムは国内初の取り組みになるという。
このようにF-グリッド構想は工業団地という地域特性と、地域のコミュニティを一体化する防災設計の基に進められている。LLPでは今後も本事業を継続し、より強固な体制の構築を推進していく方針だ。なお、非常時地域送電システムの運用を開始した2015年10月22日は、大衡村役場周辺においてLLP加盟企業と大衡村役場の関係者など約50人が参加し、非常時の地域送電を想定した合同訓練が実施された(図5・6)
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