タピオカの残りかすからバイオエタノールを製造、設備コスト削減に成功自然エネルギー

NEDOは、タイ化学技術省国家イノベーション庁と進めてきた、キャッサバパルプからバイオエタノールを製造する実証実験において、設備を削減できる技術を開発し、実証に成功した。

» 2015年11月20日 11時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、タイ科学技術省国家イノベーション庁(NIA)と2012年12月にキャッサバ(タピオカの原料)パルプからのバイオエタノール製造技術の実証に向けて、基本協定書(MOU)を締結。その後、2014年4月からプラントをタイ・サケーオ県のEBP Ethanol社敷地内に設け、バイオエタノール製造コスト目標達成のための実証運転を続けてきた(図1)。委託先はサッポロビールと磐田化学工業である(関連記事)。

photo 図1 運用を進めているバイオエタノール製造プラント 出典:NEDO

 従来、タイのバイオエタノール製造は、キャッサバイモをそのまま発酵させて利用しており、タピオカなど食料との競合が発生する状況だった。そこで、NEDOとNIAでは、食料と競合しないバイオエタノール製造技術を確立するため、タピオカを作るためにでんぷんを抽出した後のタピオカの残りかすであるキャッサバパルプを利用したバイオエタノール製造の実証を開始。未利用資源の有効利用を推進し、同国でのバイオ燃料増産に貢献するとともに温室効果ガスの排出削減を目指してきた。

 キャッサバパルプでのバイオエタノール製造は、従来の製造方法に比べて費用対効果の面で課題を抱えており、コスト削減技術の確立が必須となっていた。

 実証事業では目標達成のために高温発酵酵母を開発し使用した。さらに糖化と発酵を同時に進める操作方法(並行複発酵)を組み合わせて、発酵工程での冷却エネルギーの低減、さらに酵素を投入するタイミング・投入量を工夫することにより、発酵液粘度を下げることに成功し、設備費の削減などを実証した。

photo 図2 パイロットプラントにおけるキャッサバパルプからのバイオエタノール製造工程フロー 出典:NEDO

 その結果、80キロリットル/年のバイオエタノール製造能力をもつパイロットプラントの実証運転で得た知見、データからスケールアップ機(商用機)を建設した場合、製造コスト目標15タイバーツ/リットルを達成可能となり、バイオエタノール製造コスト削減技術の有効性が明らかになった。なお、このパイロットプラントでのキャッサバパルプからのバイオエタノール製造工程はキャッサバパルプを細かく砕く粉砕工程、同パルプを加水分解する液化工程、アルコールを造る発酵工程、アルコールを取り出して生成する蒸留・脱水工程からなる。

 NEDOでは今回の技術の有効性をキャッサバパルプエタノール事業化に興味を持つ企業・学会関係者等に周知するため、バンコク市内で普及セミナーも開催している。また、タイを皮切りにキャッサバイモの栽培を行っている東南アジア地域への技術を普及拡大することで温室効果ガスの排出削減を目指す。

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