岡山県の真庭市で木質バイオマス発電所が運転を開始して、市が掲げる産業都市構想は大きく前進した。林業と製材業が共同でバイオマス産業の創出に取り組みながら、観光にも生かして地域の活性化を図る。一方で年間の日射量が全国平均を上回る瀬戸内海の沿岸部では太陽光発電が拡大中だ。
中国山地のほぼ真ん中に位置する真庭市は9つの町と村が合併して2005年に誕生した。岡山県の自治体では面積が最も広く、約8割を山林が占める、発足当初から森林資源を生かした木質バイオマスの利用拡大に取り組み、バイオ燃料の製造や木質ボイラーによる暖房・温水の活用を推進してきた。
2014年になると「真庭バイオマス産業杜市(とし)構想」を策定して、国からバイオマス産業都市の認定も受けた。あえて「杜市」としたのは、杜(もり)を生かした都市づくりを目指すためである。需要が縮小する林業と製材業を中核に新たなバイオマス産業を作り上げることで、森林の保全と再生可能エネルギーの拡大を図りながら地域を活性化していく狙いだ。
構想の目玉になるプロジェクトが木質バイオマス発電所の建設である。2012年度から検討に着手して、3年後の2015年4月に「真庭バイオマス発電所」が運転を開始した(図1)。地元で1923年から製材業を営む銘建工業を中心に、真庭市役所や森林組合など合計10団体が参画して発電事業を運営している。
発電能力は10MW(メガワット)にのぼり、木質バイオマスだけを燃料に利用する発電所では日本で有数の規模だ。年間の発電量は7920万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算すると2万2000世帯分で、真庭市の総世帯数(1万8000世帯)を上回る。
燃料には地域の森林で発生する間伐材などの未利用木材を年間に9万トン使うほか、製材所から出る端材を5万8000トン利用する計画である。発電所が立地する産業団地の中には製材工場が集まり、森林組合などを通じて未利用木材を大量に買い取るための集積基地も整備した(図2)。木材から燃料になる木質チップを製造する工場も稼働中だ。
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