真庭市は鳥取県との県境に位置して、南北に瀬戸内海と日本海、東西に近畿と九州を結ぶ交通網の要所でもある(図3)。
その利点を生かして、バイオマス産業の拠点になる施設と森林の見学を組み合わせた「バイオマスツアー真庭」を2006年から続けている。新しい木質バイオマス発電所も見学ルートに加わった。
すでにツアーの参加者は年間に2500人を超える規模にまで拡大している。発電事業に関心がある事業者のほか、子供を対象にした環境学習にも利用できるため、新しい観光産業に発展する期待は大きい。市の北部には牧場で有名な蒜山(ひるぜん)高原が広がり、農林業と観光業に再生可能エネルギーを組み合わせたバイオマスタウンは他の地域にない魅力だ。
バイオマスツアーの見学先の1つに真庭市役所がある。2011年に完成した本庁舎は地元産のヒノキを随所に使いながら、木質バイオマスボイラー2基を備えて館内の冷暖房に利用している(図4)。年間の電力消費量に換算すると80万kWhに相当して、220世帯分の電力を節約する効果がある。自治体が率先してバイオマス産業杜市をアピールしていく。
真庭市では木質バイオマス発電所が稼働する以前でも、エネルギーの消費量に占める木質バイオマスの利用率は10%を超えていた。新たに木質バイオマス発電所が電力を供給できるようになったことで、その発電量をすべて市内で消費すると比率は一気に40%まで高まる。
現在推進中のバイオマス杜市構想の中には木質の利用拡大に加えて、稲わらや家畜の排せつ物などの有機廃棄物をエネルギーに転換するプロジェクトもある(図5)。こうした取り組みを通じて2022年度までに年間30万トンのCO2(二酸化炭素)を削減する一方、バイオマス産業で250人分の新規雇用を生み出す計画だ。
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