瀬戸内海の島で太陽光発電、工場や家庭の廃棄物はバイオマスにエネルギー列島2015年版(34)広島(3/3 ページ)

» 2015年12月08日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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農業用ダムで41メートルの落差を生かす

 広島県の再生可能エネルギーは太陽光とバイオマスを中心に急速に拡大して、バイオマス発電の導入量は全国で6位になっている(図7)。さらに新しい小水力発電所の建設計画も動き出した。

図7 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 再生可能エネルギーを推進する県の環境県民局が農業用ダムをはじめ55カ所を対象に小水力発電の導入可能性を検討した結果、第1の候補になったのが県中部の世羅町(せらちょう)にある「三川(みかわ)ダム」である。1960年に完成したダムで、現在は農業用水のほかに水道用水や工業用水を供給する役割を担っている。

 このダムから下流に向かって120メートルほどの場所に、小水力発電施設を建設中だ(図8)。ダムの直下にある放水バルブから導水管を引き込んで発電に利用する。水流の落差は41メートルになり、最大で500kW(キロワット)の電力を供給することができる。2015年度内に運転を開始して、年間の発電量は230万kWhを見込んでいる。

図8 「三川ダム」に建設する小水力発電施設(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

 現在でも広島県内には稼働中の小水力発電所が29カ所にある。大半は1950〜60年代にかけて造られた古い設備で、固定価格買取制度の対象にはならない。民間企業が運営していて、発電した電力は1kWhあたり9円の安い価格で電力会社に売電している。

 すでに老朽化が著しい発電設備もあり、設備を更新すれば固定価格買取制度を適用することが可能になる。最高34円(税抜き)で売電できることから、多くの事業者が発電設備の更新を検討中だ。太陽光発電と同様に県が先行事例を作ったうえで、民間事業者の導入を促進していく。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −中国編−」をダウンロード

2016年版(34)広島:「遊園地がメガソーラーに、島にはCO2の少ない石炭火力発電所」

2014年版(34)広島:「メガソーラーの収益を地域に還元、自治体と電力会社が手を結ぶ」

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