環境への配慮から企業でも紙資源を節約する動きが進んでいる。そんな中で“紙を使う”プリンタ製品を手掛けてきたセイコーエプソンが、“紙を再生する”「世界初」(同社)の製品「PaperLab」を開発して話題となった。開発機を初めて一般公開した「エコプロダクツ2015」の同社ブースで、その実力を取材した。
「使用済みの紙から新しい紙を生み出す世界初のオフィス製紙機」。セイコーエプソン(以下、エプソン)は2015月12月1日に発表した「PaperLab(ペーパーラボ)」の開発機を、「エコプロダクツ2015」(2015年12月10〜12日、東京ビッグサイト)の同社ブースで初めて一般公開した(図1)。来場者の注目度も高く、PaperLabのデモンストレーションが行われる度にブース内に収まりきらないほど多くの人が集まっていた。
PaperLabは使用済みのコピー紙を投入すると、約3分で再生紙を出力する装置だ。A4用紙の場合、1分間に約14枚の再生紙を生産できる。1日8時間稼働した場合、6720枚生産できる計算だ。A4・A3サイズのオフィス用紙に加え、名刺用紙などの厚紙も作ることができる。色や香りのついた再生紙も生産可能で、設置すればオフィス内で紙の再生工程を全て完結することができる(図2)。
エプソンといえば言わずと知れたプリンタメーカーだ。しかし環境への配慮から紙という資源を節約しようという動きも強まっている。こうした状況の中で「“紙を使う”製品を作ってきたエプソンに、何かできることはないか」という観点から開発したのがPaperLabだという。「Advanced Paper Project」名付けた新製品プロジェクトの第1弾として、2011年ごろから開発が始まった。
通常、再生紙を作る場合は古紙として回収した後に水と混ぜて繊維状にほぐす。その後薬品などを利用して金属やビニールなどの異物、インクなどを取り除いて古紙パルプを製造するという手順を経る。このように製紙工程において、水を使うことはほぼ常識といっていい。一般的に、A4サイズの紙を1枚生産する際にはコップ1杯分の水が使われるという。
PaperLab最大の特徴が、こうした通常の製紙工程のように水を使うことなく再生紙を作れるという点だ。機器内の湿度を保つために使用する少量の水以外、一切水を水を使わずに紙を生産できるエプソンの独自技術「Dry Fiber Technology(ドライ・ファイバー・テクノロジー)」によって実現している。PaperLabのために開発した新技術だ。エプソンがうたう“世界初”は、この水を使用しない乾式の製紙機においてという意味になる。
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